エアライフル用固定倍率プリズムサイト MTC Optics SWAT Prismatic 10×30 Atomのレビュー
記事作成日:2020年12月4日
MTC Optics製のプリズムサイト、『SWAT Prismatic 10×30 Atom』をつぼみトレードカンパニー様よりご依頼頂いたのでレビューしていきます。
ちなみに製品名に入っている「SWAT」は警察特殊部隊の方ではなく「Super Wide-Angle
Technology」というより広い視野を実現する技術の略称になります。
尚、こちらの製品はよくある実銃用の光学機器はなく、エアガン(エアライフル)用の光学機器になります。
AIRGUN of ARIZONAがYouTubeに投稿している動画がSWAT Prismatic 10×30 Atomの雰囲気を掴みやすいと思うので、紹介します。
エアガンとはエアソフトガンとは異なり、一般的には4.5mm金属ペレットを高圧ガスによって撃ち出す製品で、ハンティングだと小動物や鳥類の狙撃に使ったり射撃競技で使われたりします。
日本だと空気銃と呼ばれ、主に狩猟で使われる種類の銃になります。(エアソフトガンやモデルガンは遊戯銃)
付属の説明書はこんな感じ。
両面フルカラーの写真付きで分かりやすい説明書となっています。
特殊な仕様故にオプションの付属品が中々充実しており、目盛りが記されたシール(使い方は後述します)に長さの異なるマウント、10mm→20mm変換アタッチメントと六角レンチが付属します。
本体に付いているマウントがミドルサイズ、オプションでショートとロングが付属する感じです。
何故こんなに長さの異なるマウントレールが付属するのかと言うと、これ自体がオフセットマウントの役目を兼ねているからのようです。(長さの異なるマウントの使い方は後述します)
10mmマウント(11mmマウントとも呼ばれる)を20mmレールに変換する為のアタッチメントはこんな感じ。
挟み込むだけのシンプルな変換マウントです。
MTC SWAT Prismatic 10×30 Atom本体はこんな感じで、プリズムサイト故に全長が短いのが特徴です。
対物レンズ側にはバトラーキャップが付いており、開くと270度ほど回転させる事が出来、チューブに対して平行に開く事が可能です。
また、このバトラーキャップはナットを緩める事により回転させる事が可能です。
横などは問題無いですが、マウントベースが干渉するので真下に開くような形にする事は出来無さそうです。
同梱というか装着済みのマウントリングはこんな感じ。
チューブ径が34mmとかなり太い製品で、マウントリング片側で保持する仕様という事もあり、かなりがっちりしたマウントリングが付属します。
専用マウントリングという訳では無いので、34mmチューブ対応のマウントリングに交換する事も可能です。
しかし、このマウントリングには変わった機能が付いており、マウント自体で傾斜を付ける事が出来るのです。
いわゆる傾斜付きマウントとして使う事が可能で、その角度を調整する事が出来るという訳ですね。
使い方はマウント下部のネジを緩めてマウントをスライドさせる感じです。
角度はプラス、マイナス両方で最大72MOA分動かす事が出来ます。
マウントベースにはこのように細かい溝が掘られており、しっかり噛み込む構造になっています。
なので、一度設定したらそう簡単にはズレる心配は無さそうな感じの構造です。
エレベーテーションノブとウィンデージノブはこんな感じで直接手で摘んで回す事が出来るタイプです。
このノブはゼロロック(ダイヤルロックやクリックストップとも言う)機能が備わっており、ノブを引っ張り、ロックを解除してゼロインを行います。
ノブは1クリックで0.1MIL動きます。
マウント側の単位がMOAなのにレティクルはMILなんですね…。
ややこしい…。
尚、レティクルの稼働量はエレベーテーション・ウィンデージ共に17.45MRADとなっています。
MOAとかMILとかMRADとか単位がいっぱい出てくる製品ですね…。
単位の説明をし出すと1記事消費してしまうので、気になる人は調べてみて下さい。
この記事が詳しく説明している気がします。
http://www1.ttcn.ne.jp/~koto-br/MOAandMIL.htm
左側にはイルミネーションレティクルの輝度調節ボタンとサイドフォーカスノブが付いています。
イルミネーションレティクルで使う電池はCR2032型、キャップに付いているボタンを押す事で明るさが切り替わります。
ボタンは長押しで電源ON/OFF、ボタンを押す度に明るくなり10段階で調整する事が出来ます。
最大輝度になったら最低輝度になり、ループします。
サイドフォーカスはかなり特殊で、本来付いている目盛りが付いていません。
説明書を見ると付属のシールを切って貼るみたいですね。
ちなみに、6mの距離からピントを合わせる事が出来るという、かなり特殊なサイドフォーカスになっています。
その為、10倍率とは言えどもかなり幅広い距離で使える製品となっています。
目盛りのシールは2枚付属します。
何故サイドフォーカスに予め目盛りが付いていないかというと、視度調節ノブを動かす事によってサイドフォーカスの回転に対応する適切な距離が変わるからのようです。
シールの貼り方に関しては取扱説明書にも詳しく記載されていますが、簡単に言うとこんな感じ。
- 視度調節ノブを調整します。
- サイドフォーカスを無限の位置に(右回転で限界まで)回します。
- 距離が分かるターゲットを視認して綺麗に見えるまでサイドフォーカスを回します。
- ピントが合う所に距離に応じたシールを貼ります。
ユニークですねぇ…。
接眼レンズ側にはラバーのアイカップが付いています。
レンズ部分には「Recoilless only!」と書かれた保護キャップが付いています。
エアガン用という事もあって、耐衝撃性能は備えていないようですね。
ちなみにこのキャップはアイカップに繋がっていますが、外す事が可能ですが、個人的には付けて使う事をオススメします。
というのもこの製品はアイカップによって視界を遮り、ターゲットに集中する事を目的としている為です。
実際、アイカップを外して覗くと何か中途半端に視界の周囲のみが等倍になるので変な感じになるんですよね…。
尚、アイカップはひっくり返す事が出来ます。
視度調節ノブはアイカップをひっくり返した状態で操作する事が出来ます。(レンズ左上に視度調節用の目盛りが付いてます)
レンズとレティクルについて
続いて、レンズコーティングを見ていきます。
接眼レンズと対物レンズは共に緑系のマルチコートが施されています。
紫や黄色などの反射も確認できるので複雑なコーティングが掛かっている事が分かります。
レティクルはこんな感じ。
MD5という目盛りの付いた十字レティクルで、けっこう細めの線です。
アイレリーフが14mmしか無く、物凄く撮影しにくかったです…。
私が使っているのはミラーレス一眼レフカメラで、レンズ自体に保護レンズが付いている製品なのですが、カメラのレンズをピッタリ接眼レンズにくっつけてギリギリ撮影出来るレベルのアイレリーフでした。
アイレリーフの短さに関してはオフィシャルの説明でも「ultra-short eye relief」と書かれている通り、本当に短いです。
アイレリーフの距離が非常に短いというだけではなく、アイボックスも物凄く狭く、ちょっとでも目線を動かしたらケラれて見えなくなります。
まあ、「目をピッタリくっつけて、しっかり真っ直ぐ覗き込まないといけない」という仕様の製品ですね、
こういう点からも競技特化である事が伺えますね。
10倍という倍率故に私の部屋で撮影する事が出来ないので、屋外で覗いてみました。
撮影場所はいつもの河川敷。
約250m先を見ています。
100mで28mという視野角(FOV)を持っているだけあって割と化け物じみた広い視野ですね。
また、レンズも非常に明るく、肉眼と同レベルの明るさで見る事が出来ます。
ちなみに一般的に視野が広いと言われているELCAN Spector DR 1-4でも100mで11.4m(4倍時点)です。
一般的に倍率が高くなれば高くなるほどFOVは狭まるのですが、この製品は10倍で28mもあるんですよね…。
視界全体に高倍率な像が映し出される感じなので、割と距離感が分からなくなります。
FOV広すぎるのも問題なんですかね…。
ちなみに20m先の看板を覗くとこんな感じ。
文字もバッチリ読めますね。(撮影難しくて左上が少しケラレちゃいましたが…)
銃への取り付けについて
20mmレール(ピカティニーレール)が付いている銃には取り付ける事が出来るのですが、アイレリーフが非常に短いのでかなり注意が必要です。
オフィシャルで公開している写真にもある通り、こういう風に取り付けるのが正しい取り付け位置になります。
チークピースの真上に接眼レンズが来るような感じですね。
普通の銃に、普通な感じで取り付けると全く覗けないです。
尚、ActionArmy T10Sに関してはストックが長めという事もあり、純正のロングマウントでは足りず、このようなオフセットマウントを噛まして覗ける位置に持っていく事が出来ました。
本当、むちゃくちゃな取り付け方ですね。
実銃を模したエアソフトガンにとって、こういう製品を取り付けるのは難しいですね。
ちなみに、Silverback SRSに取り付けるとこんな感じな違法建築状態にすると丁度良い感じでした。
真っ直ぐ覗き込む必要があるので、光学サイトの高さが重要になります。
総評
という訳で、このプリズムサイトの総評なんですが、かなり甲乙つけがたいというか、「エアライフル専用」って感じの製品なので長所と短所が凄くハッキリしているんですよね。
短所に当る部分は「いや、そういう使い方の製品じゃないから」とツッコまれてしまうような内容になるので、メリット・デメリットのような事ではなくこの製品の特徴をまとめる形にします。
- 角度調節が可能な傾斜マウント付き
- 異なる長さのマウントが付属、銃に合わせた長さが選べる
- 6mの距離からピントを合わす事が出来る優秀なサイドフォーカス
- 非常に短いアイレリーフ
- 非常に狭いアイボックス
- アイカップ付きでターゲットに集中出来る
- 化け物じみたFOV(視野角)
- 明るいレンズ
だいたいこんな感じだと思います。
ちなみに、過去のブログ記事でもちょこちょここの光学サイトが登場しているのですが、私はかなり気に入ったのでそのまま買い取らせて頂き、割と愛用してます。