
ARCTURUS PP-19-01 Vityazの内部調整(Maple Leaf MR.HOP組み込み、機械式プリコックカスタム)
記事作成日:2022年5月6日
分解レビューから少し時間が経ってしまいましたが、ARCTURUS PP-19-01 Vityazの調整を行っていきます。(途中、VSR-ONEとかSAA.45とかその他色々触ってたので、ちょっと放置気味でした)

カスタムの方向性について
この銃はVer3ベースのマイクロスイッチメカボックスが採用されており、特殊形状故メカボックスの交換が出来ない上に電子トリガーを入れるにもメカボックスの加工やらセレクタープレートの交換やらが大変そうな印象です。
失敗したら元も子もないのでやすやすと試せない…。

しかし、このメカボックスには逆転防止ラッチ解除スイッチが付いているので、安心してプリコックさせる事が出来ます。

その為、今回は最近全くやらなくなった機械式プリコック+トリガーストロークのショート化でレスポンス向上を試みる事にしました。
尚、別の作業をやりながら調整を進めていったので、所々紹介の順番が前後しているのでご了承ください。
撮影順に記事を作るとあれやってこれやってと調整箇所が行ったり来たりしてしまうので、今回は調整内容の分かりやすさ重視の順番にしています。
ギアボックス周りの調整
ギアボックスは基本的に純正構成のまま初速を上げつつプリコックするみたいな感じで調整を進めていきます。
今回、プリコック化させる事によってギアの回転速度を上げる必要も無いと判断したので、ギアやモーターもそのままです。
逆転防止ラッチ解除レバー周りの調整
箱出し時点で動かした時から気になっていた独自の逆転防止ラッチ機構の調整です。
分解レビューでも紹介しましたが、無負荷状態で既に逆転防止ラッチ解除レバーが逆転防止ラッチを押しており、ベベルギアと接触するかしないかギリギリの状態の位置に来ていました。
また、スパーギアとも接触しており、逆転防止ラッチ解除レバーが削れていました。


これを改善する為に、少し削り角度を調整したりしました。
純正状態程の大きな突起が無くても十分逆転防止ラッチを解除する事が出来たので、全体的に薄くした感じです。


これでスパーギアとの擦れが無くなり、逆転防止ラッチ解除レバーを押した時にだけ逆転防止ラッチと解除レバーが接触する形になりました。
吸気系周りの調整
吸気系周りは最初から問題のあったタペットプレートのみ交換、シリンダーヘッドやノズル、シリンダーなどは純正のまま使う事にしました。
純正のタペットプレートは補強付きではあるものの角度が90度になっていないので、交換する事にしました。
ここの角度が狂ってると色々な所で問題を起こす可能性が高まるので、ちゃんと90度になっているタペットプレートを使いたいですね。

尚、タペットプレートはカスタムパーツとして単品売りしている製品であってもここが90度になっていない製品がよくあるので、店頭で現物をチェックしてから買った方が良いです。
ハズレ個体を引くと1000円でゴミを買う事になります。
今回選んだのはLONEX エンハンスド タペット Ver.3 ギアボックス(GB-01-19)です。
過去に何度か使っていますが、しっかり固くて程よい弾性もある材質的にも良いタペットプレートです。
また、羽の部分が90度になっており、ノズル閉鎖のタイミングが速いのも気に入っています。


LONEX 強化タペットプレート Ver.3 GB-01-19
ARCTURUS PP-19-01 VityazのメカボックスはVer3ベースとは言っても特殊なメカボックスなので一応互換チェックを行いました。
最低限タペットプレートを動かせる状態にして、動かしてみた所特に問題無かったです。


タペットプレート最大後退状態でしっかりノズルを後退していたので、これも問題無かったです。
やっぱりこのメカボックス、後ろ側が短くなっているだけで前側はVer3ですね。


機械式プリコック化セクターギアの用意とギア周りの調整
当初、純正セクターギアを使おうと思っていたのですがこの純正セクターギアは開放側が2枚セクターカットされており、タペットプレートの開放タイミングとピストンの開放タイミングが近く、場合によっては気密漏れを起こす可能性があったので、引き始めの2枚をカットしたセクターギアを用意、機械式プリコック化加工を施す事にしました。

メカボックスが短くなっている為、2枚以上のセクターカットは必須。
という訳で、ZC製品のギア(ARCTURUS PP-19-01 Vityaz純正と同一の物)をベースに引き初めの方をセクターカットしつつ、カットオフカムの位置をズラした状態のセクターギアを用意しました。
尚、カットオフカムを新造するのには耐熱金属補修剤のジーナス GM-8300を使用、60度以上の温度で硬化させています。


何度かカットオフカムの大きさや位置を調整したので、ちょっと表面が汚くなりましたがこれでプリコックさせる事が出来ます。
理屈としては、当ブログでも何度か紹介しているARES EFCSメカボックスで行える磁石ずらしのプリコックカスタムと同じです。

磁石の位置をずらしてカットオフタイミングを移動させている。
既存のカットオフカムを排除、反対側にカットオフカムを新造する事でギアの停止位置をずらし、カットオフタイミングを変えます。
これ自体は結構昔からあるやり方で、メーカー品だと東京マルイ PSG-1が初じゃないかと思います。
個人でやってる人は結構居たと思いますし、自分も電子制御が一般的では無かった時に東京マルイ純正セクターギアでこの機械式プリコックカスタムをやっていました。
尚、ベストなカットオフタイミングを見つけるには、何度も分解組み立てを行い、微調整していく必要があります。最終的にはをはこのような感じで、カットオフレバーが跳ね上げられた直後はちょうどピストンが半分程度後退している状態です。

カットオフカムがカットオフレバーから離れたタイミングのピストン位置は7〜8割程後退した状態になります。
この後暫くオーバーランして、ピストン開放ギリギリの位置で停止する感じです。(ピストン停止位置については後述)

尚、シム調整とグリスアップはいつも通りな感じ。
0.1mm程度のクリアランスを設けた状態でギアとセクターギア、スパーギアの軸受けにG.A.W. G-GREASEを塗布、ベベルギアのボールベアリングにはG.A.W. G-LUBEを塗布しています。


ギア周りはこんな感じです。
紹介自体はあっさりしていますが、セクターギアの調整にかなり時間を使ってます。
ピストンの重量UP、AOE調整
ピストン自体は純正のままで、形状的に気に入らないピストンヘッドを交換しつつ、重りやAOE調整スペーサーを組み込んでいきました。
用意したパーツは『明日香縫製 ピストンウェイト レギュラータイプ AS211PW』、『G.A.W. 電動ガン用AOEアジャストスペーサー』、『LayLax PROMETHEUS EG ピストンヘッドPOM NEO』です。


ピストンウェイトはピストン重量を丁度良い重さにするのに必要な重りの在庫が切れていたので購入。
AOEアジャストスペーサーは手持ちの在庫。AOE調整をする為に使います。
ピストンヘッドは元々DCI Gunsの側面吸気ピストンヘッドを買おうと思ったのですが、在庫切れのようだったのでLayLax製にしました。
LayLax PROMETHEUS EG ピストンヘッドPOM NEOとG.A.W. 電動ガン用AOEアジャストスペーサーの組み合わせでは相性問題が起きたので、ピストンヘッド側の出っ張りを削りました。


ピストン重量は33gです。
今回のセッティングは少し重めの方が良い気がしたので、丁度良い重量になったと思います。

ピストンヘッドがPOMなのでロックタイト425を使って固定。
また、ピストンヘッドのOリングをG.A.W. FRUS-Oリングのちょうど良いサイズに変更しました。


G.A.W. FRUS-Oリング、昔は2個で440円とそれなりにコストパフォーマンスが良かったのですが、今これを買おうとすると1個600円もするので、何でもかんでもこれを組むというのは難しくなってきましたね…。
シリンダーやピストンヘッドとの相性
また、ラックギアの3枚目を半分まで削り、セクターギアと衝突しないように調整を行いました。
AOEはバッチリですね。


トリガーのショートストローク化と引きしろの調整
せっかくのマイクロスイッチ搭載メカボックスな訳ですし、電子トリガー並とはいかなくともトリガーストロークを短くしたかったので、ショートストローク化を行う事にしました。
調べてみた感じ、トリガー周りのパーツには結構遊びがあったので、プラ板を貼って遊びを潰すだけでも十分改善出来そうだったので、スイッチを押す側に1mm貼り、スイッチ下部に0.3mmのプラ板を貼りました。


尚、やりすぎるとカットオフが効かなくなったり、トリガーを引いている最中にカットオフされてしまったりなど、問題が起きたので、やりすぎ注意な感じでした。
専用パーツかつ補修パーツも手に入らないと思うので、加工は最低限かつ元に戻せるようにするのが良いでしょうね。
また、ショートストローク化を行った状態でトリガーを深く引きすぎた時にスイッチが滑ってカットオフされてしまうという問題があったので、トリガーの引きしろを短くする為にマイクロスイッチ側に厚さ2mmのゴム板を貼りました。
また、信号線のはんだ付けがかなり甘くて弄ってる最中に剥がれてしまったので、再度はんだ付けを行いました。


モーターとピニオンギアについて
モーターは純正が高トルク・ローサイクルと割と好みなタイプのモーターだったので、そのまま流用する事にしました。
プリコック無しだと高電圧でぶん回さないとレスポンスがめちゃくちゃ悪いので、微妙な種類ですが…。

ただし、ピニオンギアとベベルギアの相性がイマイチ良くなかったので、ピニオンギアは交換する事にしました。
左に写ってるのが純正で歯が尖っており高さも低く、角度が浅いです。
右に写っているのはZCやSHSなどの名義で販売されている、今回使っているベベルギアと相性の良い歯が丸っこくて歯が高く、角度が深いギアです。


このピニオンギアに交換した結果、箱出し状態でも気になっていたギア鳴りが解消されました。

動作はこんな感じ。
ただ、モーターホルダーが片側のみしか無い、G36仕様である上にグリップ形状が微妙なのかグリップを取り付けた時に作動音が少し変わり、若干煩くなってしまう問題は残っています。
ピニオンギア変えて動作音は割と良くなったかな。
— エボログの中の人@3Dプリント楽しい (@Evolutor_web) May 2, 2022
グリップ付けた時に音変わる問題は解決できてないけど…。 pic.twitter.com/k3RakD6LEj
まあ、これくらいのノイズなら許容範囲内かなと…。
ピストンスプリングについて
ピストンスプリングは純正のままではなく少し固めの不等ピッチにしました。
今回のカスタム内容においてピストンスプリングは初速だけではなくピストンの停止位置(プリコック位置)にも影響を及ぼす為、色々なパターンを試しましたが、手持ちのスプリングで丁度良い初速が出てピストン位置が安定したのがこの不等ピッチスプリングでした。

等ピッチより不等ピッチの方がオーバーランの量が安定していたんですよね。
という訳で、色々と調整していった結果、7.4V 1000mAhのLiPoバッテリーを使ってかなりギリギリの位置までピストンを後退させつつ、停止位置を安定させる事が出来ました。
電子制御並の安定感を実現した pic.twitter.com/ov9R9TLcVw
— エボログの中の人@3Dプリント楽しい (@Evolutor_web) April 28, 2022
ただし、暫く動かしていたらちょっと初速が上ってきてしまったのでピストンスプリングをカットして焼き潰ししました。
一応この状態でもプリコックは問題無かったので良しとしましょう。

バレル・チャンバー周りの調整
インナーバレルに関して、純正で入っていた鉄バレルは内径がタイトめ(6.03mm相当と思われる)で、今回のカスタム内容的にタイトは初速調整が大変なので内径6.05mm〜6.08mm程度のインナーバレルに変更する事にしました。
転がってたインナーバレルを使用したのでメーカーは不明ですが、長さは248mm、HOP窓形状は普通な感じの真鍮製です。


HOPパッキンはMaple Leaf MR.HOPにして、HOPクッションをMaple Leaf HOP UPテンショナー Ωにしました。
MR.HOPはGBB用の方では色々試した事あるのですが、電動ガン用は試した事が無かったので今回試してみる事にします。
HOP UPテンショナー ΩはMaple Leafのパッキンと組み合わせる時のテンプレですね。

この組み合わせにするという事は、重量弾ぶっ飛ばす仕様になるのでかなりピーキーなセッティングになりそうな気がします。
最近大人しめな物ばかり作ってたので、たまにはこういう仕様のを作っても良いかなと…。
という訳で、Maple Leaf MR.HOPをバレルに取り付けます。
バレル外径に対してパッキン内径が少しタイトめだったので、滑りを良くする為にSilverbackのグリスを塗布しました。
MR.HOPは気密を保つ為の突起が内側と外側に付いているので、バレルに取り付けると少しボコボコした見た目になるようです。


HOPパッキンとチャンバーとのクリアランスも問題無かったので、そのまま取り付け。
Maple Leaf HOP UPテンショナー Ωの取り付けも問題無さそうでした。


尚、HOP最低の状態ではほぼノンHOPな状態からスタートします。
最後にアウターバレルとインナーバレルのガタ取りの為にバレル先端にアルミテープを巻いて外径を調整しました。

とりあえずバレル・チャンバー周りはこんな所です。
外装パーツの組み立てと調整
外装パーツも少しだけ気になった所だけ調整しました。
まず、ボロボロになっているアウターバレル前側を整えました。
元々寸法がおかしくて圧入されていたせいで傷だらけになっていたのを、表面をヤスリ削って大きさを調整した後、黒染めしています。


メカボックスをレシーバーに組み込み、インナーバレルを取り付けます。


分解時は1個ずつパーツを外していきましたが、組立時はフロント側を一通り組み立てた後、レシーバーと合体させました。
実質、フロント側とレシーバー側はリアサイト下部のピンとアウターバレルを固定しているイモネジのみで固定されています。


また、これも組立時に気づいた事ですがセレクターレバーを固定しているネジは六角のネジ頭にカバーがハマっているだけで、ラジオペンチなどを使う必要はありませんでした。

ストックのガタツキを取る為に調整を行っていきます。
まず、どの程度の寸法差があるのかを調べるために、ノギスで計測してみた所レシーバー側が約25.7mm、ストック側が約24.9mmだったので約1mm隙間がある感じでした。


この隙間を埋める為に、内径5mm、外径7mmのシム(タミヤ φ5mm シムセット OP-587)を使いました。
入れたシムの量は0.3mmが2枚、0.2mmが1枚です。


これでストックの上下のガタツキが無くなり、折りたたんだ時に勝手にロックが外れてしまう事が無くなりました。

また、ストックを展開した時に左右のガタツキがあったので、レシーバー側にテープを貼り付けてガタ取りを行いました。

これでストックはかなりガッチリしました。
箱出し時点では構えた時に気づけるレベルにカチャカチャ動いてましたので…。
コネクタをXT30に変更、ヒューズの追加
7.4V 1000mAhのストックチューブインサイズを問題なく入れる事が出来るように、配線の長さを調節したり20Aのヒューズを取り付けました。
FETは純正をそのまま流用、コネクタはXT30に変更しています。


FET付いていてヒューズレスは怖いですからね…。(なにかあったらFET即死の可能性もある)
自分が持っている7.4V 1000mAhサイズのバッテリーは基本的に配線を短くしているので、配線を折り曲げずにそのままトップカバー内に入れる事が出来ます。


チャージングハンドルの動きも問題なし。
あと、HOPダイヤルの回転方向が分からなくなるので、メカボックスに白マーカーで矢印を描きました。

調整後の初速と発射サイクル、レスポンスについて
諸々調整が終わったタイミングでの初速と発射サイクル、レスポンスを見ていきます。
テストで使用したバッテリーはDCI Guns 7.4V 1000mAh 25-50C。
BB弾は東京マルイ 0.20g樹脂弾です。
初速と発射サイクルはこんな感じ。
最大初速は93m/s程度、発射サイクルが11.5発でした。


ちなみに、実銃のPP19の発射サイクルが毎分700発(約11.6発)なので、それに近い発射サイクルになりました。
セミフルの動きとプリコック解除はこんな感じ。
尚、この動画はピニオンギア交換前に撮影した物なので、ギア鳴りしている状態です。
プリコックカスタムしたARCTURUS PP-19-01 Vityazの動作。
— エボログの中の人@3Dプリント楽しい (@Evolutor_web) April 29, 2022
発射サイクルは実銃とほぼ同し毎秒11発。
セミオートはプリコックされるのでレスポンスは悪くない。 pic.twitter.com/pfDMlo3a7i
1発目はピストン後退のみで射撃されず。
— エボログの中の人@3Dプリント楽しい (@Evolutor_web) April 29, 2022
プリコック解除はかなり硬いので片手じゃ難しい。
これ、もしかしたら逆転防止ラッチかこの解除レバーが壊れるかもなぁ… pic.twitter.com/RMG5WRwKg9
動かしていて気になった所として、逆転防止ラッチをしっかり掛ける為に逆転防止ラッチ解除レバーを削ったのと、ピストン後退状態でピストンが止まるので逆転防止ラッチの解除がめちゃくちゃ硬いです。
ここまで硬いと逆転防止ラッチや解除レバーが折れないか少々不安。
という訳で、ARCTURUS PP-19-01 Vityazの内部調整は一旦こんな所です。
一応サバゲーに持っていく前にシューティングレンジでちゃんと飛ぶかどうか確認してみた所、0.25g〜0.33gまでの重量の弾をしっかり飛ばす事が出来る事を確認したので、問題は無いでしょう。
とりあえず次のゲームに持っていって使ってみようと思っています。