7.4V駆動に最適なHTG Basic 玄 “KURO” モーターのレビュー

記事作成日：2024年2月27日

ミリタリーショップ H.T.G.様より『HTGベーシック玄 KURO モーターロング/ショート電動ガン用モーター』をお送り頂いたのでレビューしていきます。

HTGベーシック玄 KURO モーターロング電動ガン用モーターhttps://www.hercules-gear.jp/shopdetail/000000032862

HTGベーシック玄 KURO モーターショート電動ガン用モーターhttps://www.hercules-gear.jp/shopdetail/000000032863

HTGベーシック玄 KURO モーターロング電動ガン用モーター / HTGベーシック玄 KURO モーターショート電動ガン用モーター

製品の特徴について

こちらの製品は7.4VLiPoバッテリーに最適化され、海外製電動ガンの純正モーターを取り換えるだけでレスポンスとサイクルが向上し、それでいて低価格帯であるという特長を持っております。

モーターの仕様としてはロングシャフトとショートシャフトの2種類があるので、各種電動ガンのモーターと置き換えることが出来ます。

また、当製品の磁石はフェライト磁石で、ネオジウム磁石やサマリウムコバルト磁石を用いる製品と違って、極端に回転数やトルクが高い製品では無いので、使い勝手は良い部類のモーターかと思われます。

HTGでの販売価格は税込み3980円とEG1000モーターより1000円ほど高く、EG30000よりも700円ほど安い程度の価格帯の製品になります。

パッケージ側面や裏面には製品の特徴や注意事項などが記載されています。

7.4V LiPoバッテリー使用時の回転数や電流値、トルクなどのスペックは下記の通りとなっています。

無負荷時

無負荷回転数：27000rpm
無負荷電流：2.6A

ストール状態

拘束トルク：2310g･cm
拘束電流：79A

最大出力

効率：46.1％
回転数：12975rpm
トルク：1155g･cm
電流：41A
出力：157W

最大効率負荷

最大効率：68.8％
回転数：22900rpm
トルク：343g･cm
電流：13.9A
出力：81W

スペックを見る限り、非常に硬いスプリングを用いるいわゆる”流速カスタム”やDSGを用いて発射サイクルを稼ぐレベルのハイサイクルカスタムのような高負荷系カスタムよりも、柔らかめのスプリングを用いる、至って普通の仕様の電動ガンと組み合わせるのが良い感じがします。

また、DSGであっても柔らかめのスプリングを使う低燃費・高レスポンス系のカスタムとの相性も良さそうですし、回転数が少し高めな所から秒間20発を超える程度のちょっとしたハイサイクルカスタムでも使い勝手の良いモーターのような印象があります。

外観紹介

という訳で、HTG Basic 玄 “KURO” モーターの外観を見ていきます。
ロングモーターとショートモーターはシャフトの長さが違っているだけで、それ以外の差は無いので、仕様が同じ箇所は片方のモーターの写真だけで紹介します。

モータータワースプリングはかなり緩く、自然に脱落してしまうサイズでした。
これは取り付けやすくする為に線形が細い柔らかいスプリングを採用した為、モータータワーとのサイズが微妙に合わなくなってしまっている事が原因のようです。

ショートモーターに関してはスプリングが外れるのは通常の仕様なので、別に問題にはならないと思いますが、ロングモーターでグリップ内にモーターを入れる仕様の場合はこのスプリングが外れると困る事もあるので、スプリングの端をペンチなどで歪ませ、モータータワーに固定させてあげると良いと思います。

また、モータータワーのサイズに関しては一般的なモーターと同じなので、スプリングを交換するのも有りだと思います。

ピニオンギアはスチールの焼結仕様で、O型仕様になっています。
歯のエッジは程よい丸みがあり、厚みや角度的にも多くのベベルギアとの相性が良さそうな形状になっています。
ピニオンギアには焦げ跡が付いていますが、これは焼結時に付いた物と思われます。

ロングシャフトのモーターに付いているモータータワーはアルミ削り出しで出来ており、シャフトとの抵抗を減らす為の軸受が付いているのですが、玄モーターではボールベアリングが採用されています。
外側からは確認出来ませんがボールベアリングはモーターケース側とピニオンギア側にそれぞれ2個付いています。

ボールベアリングは樹脂軸受やオイルレス軸受よりも抵抗が低く、シャフト回転時の抵抗を減らす事が出来ます。

尚、ショートモーターだとこんな感じになります。
ショートモーターにはモータータワーが付いていないので、ボールベアリングはモーターケース内部の2個のみになります。

モーターケースは黒色で、メーカー名・製品名の他、シャフトの回転方向の記載があります。

シールが貼られていますが、これは印字を保護する為の半透明のフィルムなので、剥がして使うと良いでしょう。
剥がして使う事で、シールの厚みが影響してモーターが組み込めないような事は起きにくいと思われます。

特にモーターホルダーを用いる製品の場合、モーターに貼られているシールが原因でうまく組めなかったり、モーターの上下移動が出来なくなってしまったりする事もありますからね。

自分もよくモーターのラベルを剥がして使う事がありますが、ラベルに文字が印刷されている製品の場合、「このモーター、何だっけ？」となる事がありますが、玄モーターではモーターケース自体に印字されている為、その心配がありません。

モーターケースの穴からローターのエナメル線を確認できるので身てみた所、太さは極端に太くもなく細くもなく至って普通な感じでした。

エンドベル側はこんな感じの樹脂製。
ブラシホルダー及びブラシはレイダウンタイプで、ブラシホルダーはエンドベルにネジ止めされています。

ネジ固定仕様だとSBDの取り付けがやりやすいので良いですね。

ブラシは一般的なカーボンブラシで、ブラシスプリングは少し硬めでした。
尚、ブラシはある程度あたりが出ている状態になっていましたが、もうちょっと慣らした方がよりモーター本来の性能が発揮出来るものと思われます。

実機テスト

という訳で、こちらのモーターを各種の電動ガンに組み込んでノーマルモーターとの動作を比較していきます。

検証に使用したバッテリーはBATON 7.4V 2000mAh 20C LiPoバッテリーで、バッテリーは満充電の状態にしているので8.4V程度の電圧になっている状態です。
よくあるミニSサイズのバッテリーでスペック的にも一般的な物なのでこちらを選びました。

東京マルイ P90TR（EG1000）との比較

まずは東京マルイ P90TRで試します。
バッテリーコネクタをXT30に交換してはいますが中身は純正状態で、『東京マルイのスタンダード電動ガンのモーターと置き換えたらどうなるのか』という検証になります。
東京マルイ P90TRの純正モーターはEG1000で、海外製電動ガンで使っている人も多いモーターだと思われます。

まずは純正モーターであるEG1000での動作から。
発射サイクルは秒間13.8発。

玄モーターに交換して動かした所、秒間16.6発になりました。
EG1000と比較すると秒間3.2発の発射サイクル向上になりました。

挙動を見るとよくあるスピード系モーターと同じで少しずつ回転数が上がっていき、暫く動作させると発射サイクルが最大まで上がる感じのようです。
具体的には、最初の5〜10発位の発射サイクルは少し遅め（秒間14発後半〜15発程度）で、20発ほど撃つ事で最大サイクルに上がる感じでした。

セミオートの比較（レスポンス）は音の波形で見ていく事にします。
上がEG1000、下が玄モーターの動作時の波形になります。

EG1000ではギアの動作が始まってから前進しきるまでに約0.07秒（70ミリ秒）ほどかかるのに対し、玄モーターでは0.06秒（60ミリ秒）ほどでピストンが前進しきる感じです。

ほんの僅かな差ですが、体感は結構速くなっている感じがします。

DE Airsoft 純正モーターとの比較

続いて、DE Airsoft Honey Badger by Qに組み込んでみます。
こちらはノーマル構成ではなく16:1ギアを組み込み、ピストンスプリングなども変更していますがモーター自体はDE Airsoft 純正モーターのままの状態になります。
純正モーターを活かしたカスタムとして、11.1V駆動前提で組み上げた状態になります。

という訳で、まずはDE Airsoftの純正モーターから。
16:1というスピード系ギアを組んでいるのに純正モーター＋7.4Vバッテリーだと秒間12.7発程度しか出ません。
ちなみに18:1ギアだと秒間10発程度しか出ません…。

正直この手のモーターは使う理由が特に無いので、早々に交換しちゃって良い物だと思います…。
まあ、トルクも無ければサイクルも低いので、『11.1Vバッテリーを使いたいけど回転数は上げたくないし』みたいな特殊な状況でない限り、必要にならないようなモーターだと思われます。

という訳で、この純正モーターを玄モーターに置き換えた所、発射サイクルが秒間17.2発まで上がりました。
16:1ギアとの組み合わせという事もあり、+4.5発の発射サイクルになりました。

セミオートの波形を見るとこんな感じ。
純正モーターだとギアの動作開始から0.08秒程度（80ミリ秒）でピストンが前進仕切りますが、玄モーターではこれが0.65秒（65ミリ秒）程度になりました。

この製品は電子制御によってオーバーランがほぼ発生せず、基本的にピストン前進状態で停止する仕様なので初動が少し遅いですが、それでも結構レスポンスが上がっている事が分かります。

ANT21Tモーターとの比較

最後にArcturus AK12PEを使ってみます。
こちらは11.1V用に調整した物ですが、内部パーツに関しては動作を安定させる為にスプリングレートとバレル長を弄っただけで、パーツ構成は大きくは変えていません。
ギア比は13:1、モーターは同社製ハイトルクモーターであるANT21Tを組んでいます。
尚、バッテリーコネクタは変換を噛まして繋げているのと、PERUN ETUの設定は工場出荷状態に戻しています。

ANT21Tは6000円程度で販売されているカスタムモーターで、ネオジウム磁石を採用しているトルクよりの製品ですが、Arcturus AK12PEの純正モーターにも採用されている為、今回の比較対象にしました。

尚、こちらの製品は対応モーターがショートサイズになるので、ショートモーターを組み込みます。

ANT21Tを組み込んだ状態の発射サイクルは秒間17発程度でした。
トルク系モーターを組んでいますが13:1というギア比故、発射サイクルは結構早くなっていますね。

玄モーターに交換すると発射サイクルは更に上がり、秒間20.9発になりました。
こんな感じで13:1ギアと組み合わせると7.4Vで秒間20発を超すサイクルを実現出来るようです。

なお、モーター交換後初速が1.2m/s程度上がっているのは恐らく長いバレルを組んでいる為だと思います。

セミオートの比較はこんな感じ。
AT21Tの場合はギアの動作開始から0.05秒（50ミリ秒）程度でピストンが前進し終わるのに対し、玄モーターでは0.035秒（35ミリ秒）程度でピストンが前進しきります。

組み込まれているギアも異なる、これら3機種で試した限りでは特に相性問題的な物は起きず、モーターの上下位置調整だけでギアノイズは抑える事が出来ました。

という訳で、HTG Basic 玄 “KURO” モーターのレビューは以上になります。

パッケージに記載されている『海外製電動ガンに最適!!交換するだけでレスポンスサイクルアップ!』という表記には間違い無さそうな製品だと思われます。

モーターの種類としてはスピード系のモーターな感じなので、回転数が遅い海外製電動ガンの純正モーターと置き換えて使うという用途はもちろん、ハイサイクルカスタム用のモーターとしても使えそうな気がします。
逆に高負荷なセッティングだったりプリコックカスタムのような高いトルクを必要とするカスタム向けの製品では無いような印象があります。

個人的にはA&K、APS、CYMA、DE Airsoft、E&L（廉価グレードの物）、G&G、Krytac(日本仕様）、VFC辺りのメーカーの純正モーターと置き換えると大きなレスポンス・サイクルアップを体感出来そうな気がしますし、これらのメーカーは基本的に18:1ギアを採用しているので、極端にフルオートの発射サイクルが上がるような事も無いと思います。

とは言え、回転数は高くなるので色々なカスタムパーツを試して自分の好みなスタイルが確立している人の場合、『自分の好みでは無いな』と感じる事はあると思います。

ただし、スピード系モーターという事もあり、純正構成の電動ガンであればEG1000に置き換えるよりも高いレスポンスアップを体感出来ると思いますし、海外製電動ガンにEG1000をポン付けした際に起こりがちな「ピニオンギア削れる問題」も、焼結スチールピニオンギアを採用している玄モーターでは起きないでしょう。

もっとも、ギア同士の噛み合わせが悪い状態で使い続けるとギアが削れてしまったり、シャフトが歪むような原因にもなったりするので、ギアノイズが発生する状況では使うのをやめてパーツの相性を見直した方が良いです。