電子制御トリガーシステム、不知火 陽炎1型(KAGERO TYPE1)を買ってみた【ファーストインプレッション】
記事作成日:2016年8月4日
最近、FCUこと電子制御トリガー、流行ってますよね。
国産のBigOutのDTMや、海外のASCUやBTC Spector、BTC Chimera MK2などなど、色々あります。
最近ではG&GやVFCの電動ガンにもFCUがビルドインされた状態で販売されていたり、ARESはAMOEBAシリーズで以前から、変わった方式で電子制御を行うユニット、EFCSというのを電動ガンに搭載しています。
東京マルイも、AA-12にFETを導入してますし、LayLaxが代理店をしているKRYTACもFETを採用しています。
私もFETは自作したり社外のを使ったりしましたし、FCUもARES EFCSにBTC Chimera MK2、ASCU、BigOut DTM2、DTM3、トレポンと色々な製品を組み込んだり使ったりしてきました。
まあ、そんな感じで最近盛り上がっている、エアソフトガンの電子制御業界に、新規参入してきたのが今回紹介する「不知火 陽炎1型」です。
という訳で、不知火(という会社?団体?)とフロンティア(東京都の赤羽にあるホビーショップ)のコラボレーションで作られたらしいこちらのFCUをレビューしていこうと思います。
= 2018年3月5日 追記 =====
当記事で紹介している『陽炎1型』は、2016年に発売されている製品で、2018年3月5日現在、発売・流通しております『陽炎1型改』とは全く別物の製品になりますので、ご注意下さい。
= 2016年8月11日 追記 =====
電動ガンへの組み込みレビュー記事を書きました。
「電子制御トリガーシステム、不知火 陽炎1型をE&L M4に組み込んでみた」
= 追記ここまで =====
内容物はこんな感じ。
箱を開けてびっくり、パッケージの半分以上は説明書や組み立てマニュアル等の書類で、全部で4冊付いてきます(4枚じゃなくて”4冊”)
FCU本体と説明書以外にも色々付属品が付いてきており、
何に使うのかイマイチよく分かりませんが弾速チェックの時とかに貼られるような緑色のシールや、基盤の形に切り出された紙が付属してました。
後は基盤をメカボックスに固定する為のネジと、絶縁用の樹脂ワッシャー、配線を覆うための熱収縮チューブとモーターピン、タミヤミニコネクターになります。
一応このFCUを買うだけで、電装系は一式組み立てれるようになってますね。
FCU本体はこんな感じで、最初から配線がハンダ付けされている状態で販売されています。
配線は後部配線バージョンと、前部配線バージョンが存在し、自分は後部配線バージョンを購入しています。
フロンティア2号店の店員さんいわく、配線なしの陽炎1型を購入する事も可能だそうです。
その場合は、取り寄せになるみたいです。
ちなみに付属の配線は一般的な太さの銅線で、14G〜16G位の太さです。
FCU本体はこんな感じで、メカボックス内に収まるユニットですべて完結しています。
反対側はこんな感じで、セレクタープレート検知用のスイッチが付いています。
また、プリント基板がメカボックスに触れてショートする事を防ぐ為に、絶縁フィルムが貼られています。
ちゃっかりmade in japanの文字も・・・。
こちらの陽炎1型で出来ることをざっくり書くと・・・
- バーストコントロール 10段階
- サイクルコントロール 20段階
- ピストン停止位置設定 40段階
- スプリング開放動作(トリガー長引き)
といった所。
他にもファームウェアアップデート(ショップによる有償対応)や、設定の初期化等が行えます。
ピストン停止位置設定の40段階が、一体何ミリ秒単位なのかは不明ですが、ソフトウェア的にはかなり魅力的な一品ですね。
さて・・・。
ここからが本題なのですが・・・。
このFCU、色々気になる点があります。
というか、それをレビューする為に買ったようなものなんですがね・・・。
という訳で、ちょっと気になった点や、買って調べてから分かった点などをまとめてみます。
まだエアソフトガンへの組み込みは行っていないので、使用感などではなくFCUの設計や構造などの話になります。
ヒューズは”実装されていない”
BigOut DTMには物理的なヒューズ(小型平型30A)が付いていますし、BTCやASCU製品にはデジタルヒューズが付いています。
陽炎1型には基盤を見た感じ、物理的なヒューズがついていません。
じゃあ、デジタルヒューズが付いているのかと言うと、そういう訳でもありません。
説明書によれば「ヒューズは自分で付けてね」との事・・・。
うーん・・・。
ちなみに、ショート対策も当然実装はされていないので、万が一ショートした場合簡単に回路が焼けると思います。
ヒューズを付けていれば、先にヒューズが飛ぶので大丈夫だと思うんですが・・・。
陽炎1型には、仕様上”セーフ”と呼べる状態が無い
基盤反対側の写真を見て気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、陽炎1型にはセレクタープレートの検知スイッチが1つしかありません。
この検知スイッチは、フルオート状態を検知する為のもので、このスイッチがONになっている間、フルオートになります。
スイッチがOFFになっている間はセミオートです。
じゃあ、セーフ状態は?というと、ありません。
セレクターレバーをセーフの位置に持って行っても、トリガーのスイッチが押されるとセミオートで動きます。
DTMやASCU、BTC製品などはそういった事が起こらないように、セミオートとフルオートでそれぞれ検知用のスイッチを設けているのですが、陽炎1型ではそれが省略されています。
もっとも、一般的な電動ガンの場合、セレクターレバーをセーフの位置に持って行ったらトリガーも引けなくなるんで、一応物理的にはスイッチは押せなくなっているはずなのですが・・・。
それで良いのかどうなのか・・・。
MOSFETのスペックが結構低い
予め述べておくと、私は電動ガン用のFETのパーツを自力で選んで自作する程度の知識しかありません。
FCUのような複雑なものは配線図を見るだけで頭がパンクしてしまう位の知識レベルなので、下記の記述内容が正しいかどうか、割りと怪しいです。(なので、故障覚悟で実験しました。)
というわけで、FCUを買ったら、まず確認するのはどこのパーツを使ってるのかです。
特に確認しておかないといけない(気が済まない)のは使われているMOSFET。
FCUでは心臓部とも言えるパーツだと思います。
例えば、BigOut DTM2だとInfineon製のMOSFET(同社では、「IPD034N06N3 G」と「IPD042P03L3 G」が使われています。
東京マルイのAA-12もSinopower製のMOSFET、「SM4311」と「SM4391」が2個ずつ使われています。
それぞれ、型番の違うMOSFETが使われているのはそれぞれNチャネルとPチャネルになっている為です。
で、この陽炎1型は一体どこのMOSFETを使っているのかと言うと、「Fairchild」というメーカーのものらしいです。
Nチャネルは「FDMS7660」
Pチャネルはの方はチップ側の表記が掠れてしまっており、ほとんど見えなかったのですが、末尾が「BZ」で終わるものなので、「FDS4935BZ」か「FDS6675BZ」辺りではないかと思われます。
ちなみに、Pチャネル用のMOSFETは2つ付いていました。
個人的に重要だと思っているのはNチャネルの方でなので、データシートを元に、Nチャネルだけ比較します。(Pチャネルの表記が読めなかったという理由もありますが・・・)
まずは参考までにBigOut DTM2の場合は、電圧60V、電流100Aです。
では、陽炎1型のMOSFETはと言うと、電圧30V、電流25Aでした。
MOSFETのスペック的にはDTM2で使われているものを大幅に下回るものでした。
特に電流25Aは電動ガンで使うに当っては結構致命的というかギリギリ過ぎると思います。
単純計算の話ですが、ミニSサイズのLiPoバッテリーでよくあるスペックである、7.4V 30C 2000mAhを使った場合、最大で8.4、60Aの電流を流す事が出来ます。
これはあくまでバッテリーのスペックを最大限に使った場合の話ですし、付属のケーブルも14〜16Gの太さなのでこんな大電流が流れる事は物理的にあり得ないとは思いますが、ギアクラッシュ等を起こして動作しなくなった場合、非常に高い電流が流れることは間違いないです。
30Cと書かれていても、バースト時は45Cになる個体もありますし・・・。
で、先述の通り、陽炎1型にはヒューズが付いていないので、素組みした場合はこの大電流がFCUを直撃し、おそらくMOSFETは燃えます。
じゃあ、説明書通りちゃんとヒューズをつければいいじゃないか!という事になるのですが、今度は「じゃあ何Aのヒューズ付ければいいの?」という疑問が出てきます。
DTM2の場合、100Aまで行けるMOSFETなので30Aで十分事足りるのですが、陽炎1型は25Aしかありません。
つまり、25A以上のヒューズを付けても意味が無いという訳です。
というか、25Aで理論値ギリギリなんだから、実際は20Aとか15Aとかのヒューズを付けないといけない訳で、そうなると必然的に使えるバッテリー、モーター、ピストンスプリング、ギア等に制限が出てきます。
スペックシートを見た時、「おかしくね?そんな事あるのかよ・・・」と、疑ったのですが、耐久テストがてら安定化電源に繋いで、8.4Vの電圧に固定し、10Aから順当に電流を上げていったら25Aを超えるか超えないか位のタイミングでMOSFET辺りから煙が出たので、慌てて電力供給をストップさせました。
MOSFETを触ってみたらものすごく熱くなっていたので、冷ましてから再度15Aの電流で試してみた所、問題なく動いたのでまだお亡くなりになった訳では無さそうで安心しました。
という訳で、陽炎1型には20Aのヒューズを付ける事をお勧めします。
なので、流速とかハイサイみたいな、大きな電流が必要とされるチューンは実質無理ですね。
蛇足ながら、陽炎1型のNチャネルで使われてる「FDMS7660」は1個単価約78円、DTM2の「IPD034N06N3 G」は1個単価約149円っぽいです。
カットオフ検知スイッチは、ギアの逆回転も想定済みの構造
陽炎1型のカットオフ検知スイッチは、前側にも後ろ側にも倒れるタイプのスイッチを採用しているので、万が一ベベルギアの逆転防止ラッチが掛からず、セクターギアが逆回転してしまっても壊れることは無さそうです。
また、カットオフカムが特殊な形状をしているもの(SC製やSHS製など)でも問題なく検知出来そうな感じです、
ただ、検知スイッチがかなり小さいので、ちょっとした衝撃で破損してしまう可能性があるので、セクターギアのシム調整はキッチリやる必要がありそうです。
検知不良による自動カットオフは未実装
これはDTM2にも付いていない機能ではあるのですが、一定時間カットオフが検知されなかった場合の処理は未実装のようです。
つまり、トリガーを引いたらカットオフレバーがONになるまで永遠に通電し続けます。
こんな感じで、トリガースイッチを押すと通電開始、カットオフを押すと通電ストップという感じ。
これがどういう事を意味するのかと言うと、何かしらのトラブルが起き、カットオフの検知がされなかった場合、永遠に電気が流れ続けるというわけです。
例えば、ピニオンが緩んだり外れたりしてトルクがギアに伝わらなかった場合、トリガーから指を離してもモーターは回り続けます。
最悪のパターンを考えると、カットオフレバーが破損したときです。
カットオフレバーの破損と同時にカットオフレバーがショートしてくれれば良いのですが、そうならなかった場合、セミオートの状態で動いていても、カットオフレバーがいつまでたっても検知されないので、フルオートになりますし、トリガーから指を離しても動作は続きます。
これがかなり恐ろしい事で、FETが暴走した時と似たような症状になります。
サバゲー中、トリガーから指を話しても永遠に銃が動作(射撃)し続けるって恐怖ですよね。
とりあえず、まだ組み立て前ですが、気になった点をまとめてみました。
正直な自分の感想を述べさせてもらうと「コスト削減の為に安全対策を切り捨ててるFCU」という印象です。
陽炎1型は、他社製FCUとくらべて安い部類なので、コストパフォーマンスには優れていると思いますが、その分安全性はかなり落ちています。
個人的に大きなマイナスだと思ったのはMOSFETの耐久性ですね。
流石に8.4V 25Aで煙出しちゃいけないでしょう・・・。
まあ、どノーマルな電動ガンで使うなら25Aもあれば十分なのかもしれませんが・・・。
とりあえず、次は電動ガンへの組み込みを行っていきます。
現在予定しているのは先日内部の調整が完了し、サバゲーでの実用テストも終えたE&L M4です。
最終的にはBTC Spectorを組み込もうと思っているのですが、現状手に入らないので、流通が再開されるまでのつなぎとして、陽炎1型を組んでみます。
まあ、この記事を書いている時点で組み込みは自体は終わっているんですがね・・・。
まだ耐久テストとか設定等が終わっていないので、それはまた次回・・・。
平行して別の銃もいじっているので、陽炎1型の組み込みレビュー記事は少し先になりそうです・・・。
= 8月11日 追記 =====
電動ガンへの組み込みレビュー記事を書きました。
「電子制御トリガーシステム、不知火 陽炎1型をE&L M4に組み込んでみた」
= 追記ここまで =====