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ARCTURUS AK12 PEモデルを11.1Vで安定動作するように調整していきます

記事作成日:2023年3月17日

三山商事株式会社様よりお送りいただき箱出し状態のレビューを行い、先日分解レビュー記事を書いたARCTURUS製PERUN ETU搭載電動ガン、AK12 PEモデルを調整していきます。

今回は11.1V LiPoバッテリーを使って初速の低下を起こさず安定動作させる事が出来るように調整していこうと思います。

どうやら、ユーザーやショップの方から「11.1Vを使いたい」という要望があるものの、国内仕様のAK12は柔らかいスプリングが入っている都合上11.1Vを使用した際のオーバーラン(ピストンのバウンド)が激しく、気密漏れが発生してしまい初速の低下が起きてしまい、安定して使えないという問題があります。(※開封レビューにて紹介)

今回の調整ではなるべく内部パーツを純正のままで国内用の初速に抑えた11.1V対応を行っていこうと思います。
尚、当記事で紹介する内容よりももっと簡単に11.1V対応自体は出来るのですが、自分の好みは捨てれないので好きなように弄る事にします。

尚、メカボックスを分解してしまうと保証が無くなってしまう為、もし不具合が発生した場合は分解などはせず小売店に修理に関するお問い合わせをして頂くようにとの事でした。
11.1V対応カスタムも同様に全て保証対象外の自己責任で行ってくださいとの事でした。

また、メカボックスのカスタム時は『ギアにグリスを付けすぎない』と『リフレクターの貼り付け位置』に注意する必要があります。
ギアグリスを塗布しすぎると飛び散ったグリスがセンサーに付着、動作不良を起こします。
また、セレクタープレートのリフレクターの貼り付け位置も正しい位置になっていないと、セレクターレバーが定位置で正しい動作をしなくなるので、動作不良の原因になります。

工場から写真を提供頂いた、リフレクターの定位置の情報

ピストンの調整

という訳で、まずはピストンから弄っていきます。

ピストンで主に行った調整は若干のAOE調整+重量UPのみです。
AOE調整も専用のスペーサーを使うのではなく1.5mmのワッシャーを入れただけなので、軽めの調整といった感じです。
尚、ワッシャーはピストン重量UPも兼ねているのでスチール製のワッシャーを使っています。

AOE調整に伴ってラックギアを削ったのと、スプリングとの干渉を減らす為の面取りを追加しました。
ピストンを1.5mmしか動かしていないので、ラックギアの加工が普段より控えめになっています。

これでピストンの重量は29gになります。
普段使うピストン重量よりも若干軽めですが、今回は11.1Vでの動作を安定させる為に硬めのスプリングを組み込む予定なのでこれくらいで良いでしょう。

という訳で、組み立てたピストンはこんな感じになります。

吸気系の調整

続いて、吸気系の調整ですがシリンダーやシリンダーヘッド、タペットプレート、ノズルは純正をそのまま使います。
ただし、シリンダーヘッドのみノズルの内径を3mmになるまで絞りました。

ノズルを絞るのにはいくつか理由があるのですが、今回はHOP量を変更した際の初速上昇を抑える為に絞っています。

硬いスプリング+加速シリンダーという組み合わせを行うとHOP量による初速の上下がかなり激しくなり、大きいと最大初速と最低初速で20m/s近い初速差が発生する場合があります。

ノズルを絞る事によって弱HOPから強HOPまで、同じような初速を出す事が出来るようになります。

昔はたまにやってましたが、最近はあんまりこういうセッティングにしないので、久しぶりにノズルを絞りました。

シム調整とグリスアップ

駆動系パーツもAK12 PE純正の物を使いますが、シム調整とグリスだけは自分の好みに合わせました。
シムはYOKOMOのスペーサーシム(ZC-S25)を使い、グリスはボールベアリングにG.A.W. Gルーブを使用、ギアとオイルレスベアリングにG.A.W. Gグリースを塗布しました。

シム調整をしつつ、AOE調節の確認。
パーツ構成に伴う作動性に関しては箱出し状態で快調に動いていたので、細かい確認は省いています。
既に動く事が担保されているパーツを使う調整は本当に楽で良いですね…。

適当にシム調整
AOEはベストな状態では無いものの、箱出しよりかは幾分マシ

尚、シム調整を自分の好みの具合にした場合、メカボックスにセクターギアのセクターカムが衝突する事が分かったので、メカボックス側を削りました。(写真赤矢印部)

後はグリスアップして吸気系も組み込みます。
普段ならギア単体での動作確認をする所なのですが、これらも動作に問題が無い事が確認出来ているパーツ同士の組み合わせなので、省略して一気にピストンなども組み立ててしまいます。

本当、パーツごとの相性問題が起きないって楽ですね…。

今回の調整で重要になる要素の1つとしてピストンスプリングがあります。
変更するスプリングはなるべく硬め…とは言っても硬すぎず柔すぎずな感じで純正比153.77%までスプリングレートを上げました。

選んだスプリングはこんな感じの等ピッチスプリングになります。
今回の調整用に買った物では無いので詳細は不明ですが、硬さは東京マルイM4A1用の純正比で133.33%で、製品で言うとZC M80スプリングやBATON 90スプリングなどと同等で、SHS M90やZC M100よりかは少し柔らかい程度の硬さです。

前から何度か紹介していますが、基本的に自分は表記されているスペックではなく測りに掛けて計測した数値を元に調整を行っています。
ここ数年ずっとその方法を取っていますが、今の所失敗した事がほぼ無い(あって1、2m/s調整するような微調整程度)なので割と信頼性が高い計測方法だと思っています。

尚、硬めのスプリングを使う理由は11.1Vで回した時のフルオートの安定性向上とオーバーランによる初速低下を抑える為です。
流石に純正のスプリングカットされてより柔らかくなったスプリングを使って、11.1Vのフルオートは怖すぎますからね…。

続いて、モーターホルダーを組み立てていきます。
モーター周りも純正のままですが、モーターホルダーのネジをしっかり締め込むとモーターがガチガチに固まってしまい動かなくなってしまう事が分かったので、ネジ部分にビニールテープを1枚貼ってモーターが上下に動かせる程度の隙間が生まれるようにしました。

後はメカボックスを閉じてモーターを取り付け、動作テスト用のスイッチを接続して動作検証を行いました。

動作は問題無かったので、引き続き調整を進めます。
普段ならトリガーを取り付けたりするのですが、今回は先にバレル周りの調整を行いました。

AK12 PEに限らず一部メーカーのAK系電動ガンはメカボックスとインナーバレルを連結させる事が出来るので、メカボックス仮組みの状態で初速チェックが出来るんですよね。

なので、メカボックスが一旦動作出来るようになったバレル側を用意した方が後々楽だと思います。

インナーバレル・チャンバーの調整

今回、ノズルを絞っているとは言っても比較的硬めのスプリングを使っているので純正の長いインナーバレルは使えません。
なので、適当に余っていた長さ204mmのインナーバレル(多分VFC製品)を使いました。
そもそもこのバレルを組み込む前提で、スプリングの硬さを選んでます。

恐らく何度も色んな銃で使って、内径もだいぶ研磨されているので若干ルーズ気味な内径になってる気がします。
少なくとも6.03mmのピンゲージはスカスカだったので6.05mmとか6.06mm位には広がっていると思います。

インナーバレルを変更しましたが、チャンバーやHOPパッキン、HOPクッションなどは純正のままです。

このままだとインナーバレルがガタガタだったので、ポリイミドテープを貼ってアウターバレルの内径と合わせました。
キツ過ぎず、ユル過ぎずな感じにしています。

この状態でメカボックスに連結させ、ノズル長さや気密チェックと実際に動作させて初速チェックを行いました。

こちらも特に問題は無かったです。
気になった点としては若干ノズル長が合っておらずクリアランスがありましたが、これに関しては一般的な電動ガンとしては普通程度のクリアランスなので問題にはならないと思います。

気になる人はノズルを延長させたり、HOPパッキンの形状を変更するなどしてノズル長を合わせ、BB弾の停弾位置を安定させた方がより精度が上がると思います。

トリガーとPERUN、配線の取り付けについて

とりあえず一通り確認して問題無かったのでトリガーやPERUNの基板などを取り付けていきます。
また、この際に逆転防止ラッチも取り付けました。

PERUNから伸びている配線のうち信号線(赤色の細い線)の断線が怖かったので、絶縁テープを巻いて配線を保護しました。
出来れば熱収縮チューブを使った方が良いのですが、配線のはんだ付けを外すのがめんどくさかったのでとりあえず絶縁テープを巻くだけにしています。

トリガーを取り付けたので、トリガーの引き代を調整します。
AK12 PEモデルはメカボックス外側に付いているパーツでトリガーの引き代を調整する事が出来るので、やっておいた方が良いと思います。
※トリガーストロークや引き始めの位置は調整出来ません。

外装パーツの取り付け

後は外装パーツを取り付けていくだけです。
この辺りは特に変更する箇所も無かったので、詳細は割愛します。

単純に分解時と逆の手順で組み立てていくだけです。

調整後の初速と発射サイクルについて

というわけで、今回行った調整を行った後の初速と発射サイクルを見ていきます。

尚、検証に使用したバッテリーはOption NO1 11.1V 900mAh 20CのLiPoバッテリーです。(トップカバー内に十分収まるサイズ)
ディーンズコネクタをXT30に変換するコネクタを使って接続しています。

ちなみに、AK用バッテリーであるBATON 11.1V 1100mAh 20C LiPoバッテリーはレシーバー内部にセルと配線の両方が収まらず、取り付ける事が出来ませんでした。
AK12はよくあるAK系電動ガンみたいにガスピストン側にバッテリーを逃がす事が出来ないんですよね…。(7.4Vならセルが入るものの11.1Vは太いので、ガスピストン部にセルが入らない)

検証時のBB弾はHITCALL 0.20g バイオBB弾です。

結果、セミオート時の最大初速は93m/s前後、フルオート時は若干初速が高めになり93m/s後半位になり発射サイクルは24.6発になりました。
11.1Vで13:1ギアを使ってるので流石に発射サイクルはだいぶ速くなりますね。

そして、この発射サイクルの2点バーストは中々気持ちが良いですね。
撃ってる間隔としてはセミオートに近いです。
動作の様子はこんな感じ。

尚、箱出し状態であった11.1V使用時における初速低下は完全に解消されました。

7.4v(Option NO.1 7.4V 1300mAh 20C)での動作はこんな感じでした。
発射サイクルが大人しい影響もあってかフルオート時の初速の変化はほぼ無く、セミオートの時とほぼ同じ初速でした。

7.4Vでも秒間15発程度の発射サイクルがあるので作動性は全然悪くはないですね。
PERUNのプリコック設定を使う事でレスポンスも良くなりますし、全然7.4Vでも使える仕様だと思います。


という訳で、ARCTURUS AK12 PEモデルの11.1V対応調整は以上になります。
未だに国内向けの電動ガンで11.1Vを使いたい(しかも箱出し状態で)という要望があるのがよく分からないですが、流石にこういう調整をした上で日本向けとして出荷するのはかなりのコストが掛かるので難しいんじゃないですかね…。

もしやるとしたらスプリングを海外仕様のままにして、インナーバレルを短くする事による初速調整を行っての販売がまだ現実的なのかも知れません。

ただし、この長さのアウターバレルで短いインナーバレルを使おうとするとどうしてもインナーバレルのガタ取りを行わないとBB弾がアウターバレルやフラッシュハイダーにぶつかって弾道がひどい事になると思うので、安易なバレルカットも意外と難しいのかな…と思ったりします。