
Raider Thermal Imager LK640(640×512/12μm)/LK384(384×288/12μm)のレビュー
記事作成日:2024年10月15日
89式パーツとナイトビジョン専門ショップ、南蛮堂様からのご依頼でRaider製のサーマルイメージャー、『RAIDER THERMAL LK640』と『RAIDERTHERMAL LK384』の2機種をレビューしていきます。

本製品は手持ち及び20mmレールへ取り付けての仕様を想定しているサーマルイメージャーで、クリップオン(別の照準器との組み合わせ)は想定していない製品になります。
スペックについて
基本的なスペックと価格は下記の通りです。(違いがある箇所を強調表示)
LK640
- センサー解像度:640×512/12μm
- レンズ:35mm
- NETD(温度分解能):<35mk@300K
- フレームレート:50Hz
- ディスプレイ:1024×768, 0.39inch OLED
- FOV:12.6° x 10.1°
- 光学倍率:1.95〜7.9倍
- デジタル倍率:1x、2x、4x
- アイリリーフ:45mm
- 視度調整範囲:-5〜+5
- バッテリー:18650フラット(充電式推奨)×2
- 内部ストレージ:64GB
- 重量:570g(バッテリーなし)
- 大きさ:221x83x66mm(アイピース、レンズキャップ込み)
- 保護等級:IP67
- スタンバイ時間:8時間
南蛮堂販売価格:439,000円 (税込)
RAIDER THERMAL LK640 ハンドホールド、ウェポンマウントサーマルイメージャーを購入するhttps://www.nanbandou.net/SHOP/140641.html
LK384
- センサー解像度:384×288/12μm
- レンズ:35mm
- NETD(温度分解能):<35mk@300K
- フレームレート:50Hz
- ディスプレイ:1024×768, 0.39inch OLED
- FOV:7.5° x 5.7°
- 光学倍率:3.37〜13.48倍
- デジタル倍率:1x、2x、4x
- アイリリーフ:45mm
- 視度調整範囲:-5〜+5
- バッテリー:18650フラット(充電式推奨)×2
- 内部ストレージ:64GB
- 重量:570g(バッテリーなし)
- 大きさ:221x83x66mm(アイピース、レンズキャップ込み)
- 保護等級:IP67
- スタンバイ時間:8時間
南蛮堂販売価格:269,000円 (税込)
RAIDERTHERMAL LK384 ハンドホールド、ウェポンマウントサーマルイメージャーを購入するhttps://www.nanbandou.net/SHOP/140384.html
LK640とLK384の差はセンサー解像度とレンズサイズ、FOV(視野角)のみでボディーの形状や操作性は同じです。

センサー解像度が640及び384の製品としては比較的安価な部類になります。
LK640に関してはセンサーが640×512/12μmとTrijicon IR PATROLやN-Vision Optics NOX18などのハイエンド製品とほぼ同じスペックで高解像度・高精度なセンサーが搭載されています。
LK384の方はセンサー解像度が低いものの3倍程度の倍率が付いている為遠くのターゲットの視認性が高い仕様になっています。
低い解像度の製品なりに有意義な使い方をしている印象があります。
付属品について
内容物はこんな感じで、ハードケース版と化粧箱版で少し差異があります。
ハードケースの方はソフトケースが付属、化粧箱板はMOLLEウェビング付きのナイロンケースが付属します。

尚、今後はハードケースではなく化粧箱での提供になるとの事です。
ケース以外の付属品はサーマルイメージャー本体とマウント、マウント固定用ネジ、L字レンチ、USB-Cケーブル、クリーニングクロス、説明書、保証書です。
尚、説明書や保証書の見た目も異なっていますが、内容自体は同じでした。

説明書はLK640、LK384共通の物で基本的な操作説明やスペックが記載されています。
スペック表を見る限り、レンズサイズにバリエーションがあり、それによってFOVやNETDなどのスペックが変わってくるようです。
今回お借りしている製品は共にレンズサイズが35mmの物になります。



付属のマウントはこんな感じでずっしりとした一本物のオフセットマウントが付属します。

サーマルイメージャー取付部は台形型の窪みが付いており、下部から4本のネジを使って固定します。
マウントの取り付けに関しては後述します。

特徴的なQDレバーが付いており、反対側のボタンを押す事でQDレバーが開きます。



レール中腹部には小さなネジが付いており、何かを取り付ける事が出来そうなのですが用途は不明。
脱落防止用のワイヤーを取り付けたりする為の物でしょうか。

取り付け用のネジ、スプリングワッシャー、L字レンチはこんな感じ。
大きな六角穴付きボルトが4本付属します。

USBケーブルはUSB-A to USB-Cケーブル。
内蔵メモリに保存された撮影データのデータ転送やファームウェアアップデートの為に使用する物です。

ナイロンケースはこんな感じ。
厚手のケースで、内側にはクッションが付いています。
蓋の内側に付いているポケットにはUSBケーブルなどを入れておく事が出来ます。



LK640/LK384の外観レビュー
という訳で、サーマルイメージャー本体を見ていきます。
尚、2製品共外観がほぼ同じなので違いがある所だけ比較して紹介していきます。


対物レンズ側にはラバー製のレンズカバーが付いており、本体に繋がっています。
このカバーは外す事も出来ます。



対物レンズ側の見た目はこんな感じで、先端の回せそうな部分は回せず、オレンジ色のラインの手前に付いている細かなチェッカリングが付いている部分が回せてフォーカス調ノブになっています。

対物レンズ側にはレンズサイズとF値、センサー解像度が記されています。
LK640には『35mm/1.0-640』、LK384には『35mm/1.0-384』と記載されています。


ハウジングの右側面には大きなバッテリーボックスが付いています。
ここに18650リチウムイオン電池を2本収納します。


バッテリーケースには『Raider 640』、『Raider 384』とメーカー名と解像度が記載されたプレートが付いています。

バッテリーボックス後ろ側には蓋を開ける為のネジが付いています。
ネジに付いているつまみが折り畳まれているので、展開して回します。


先述の通りバッテリーは18650を2本使用しますが、1点注意が必要です。
それはフラットトップと呼ばれる+側の出っ張りが無く保護回路も付いていないタイプの物を使用する必要があるという点です。


ボタントップ+保護回路付きの18650と比較するとこんな感じで、同じ『18650』というリチウムイオン電池ですが長さが違っています。


ボタントップ付きの電池だと電池の飛び出し量が長すぎて蓋が閉まらないです。


バッテリーケースの反対側にはスティック操作のインターフェースが付いています。
Trijicon IR Patrolでも採用されていますが、かなり操作性の良いUIです。
尚、デザインは似ていますがスティック操作のフィーリングはTrijicon製品とはだいぶ違っており、柔らかいスティックをグッと大きく押し倒すような感じで操作します。


上面にはWiFiボタンとUSB-C端子が付いています。



ハウジング底部にはマウント固定用のネジ穴が空いています。
キャリングハンドルマウントのような形をしていますが1.5倍位の幅がある専用規格のマウントなので、恐らく社外製のマウントベースを使う事は出来ないと思います。


視度調整ノブはこんな感じ。
回すと5mm程度接眼レンズが飛び出します。

接眼レンズ側にはアイピースも付いています。
このアイピースは簡単に取り外す事が出来ますが、逆に固定部が浅すぎて引っ掛けた時とかに外れてしまう可能性があります。


レンズコーティングについて
対物レンズはゲルマニウムで出来ているので、黒色のレンズで殆どの光を反射します。
接眼レンズ側は緑〜青系のマルチコートが施されています。


接眼レンズは30mm近くあり、非常に大きいです。
マウントベースの取り付けについて
マウントベースの取り付けには付属の4本の六角穴付きボルトを使用します。
また、取り付け位置は前後に調節する事が出来ます。


使うネジの本数を減らせば更に大きく動かす事が出来ますが、最低2本は使った方が良いと思います。
取り付けるとこんな感じで、六角穴付きボルトは大きく飛び出します。

また、マウントと本体側には隙間が出来ますが、どうやってもこの隙間を埋める事は出来ないと思うので、こういう寸法仕様なんだと思います。
自分が持っているiRay RH25も同じような隙間が出来るのですが、何か理由があるのでしょうか…。

銃に取り付けた時の見た目について
AR15系のトップレールに取り付けるとこんな感じになります。


覗きやすい位置に配置しようとするとリアサイトを取り付けるスペースが無くなるので注意が必要です。
AR15のトップレールを全て埋める事になるので、バックアップサイトとの併用は出来ないと思った方が良いでしょう。

また、ハウジングが目の近くに配置されるのと飛び出したジョイスティック部が視界に干渉するので両目照準時は右側がほとんど死角になります。

モニターのUIと設定、見え方について
電源を投入すると『Welcome』と表示され、5秒後暗いにモニターが点灯、UIが表示されます。
中央にはレティクルが表示され、左側には前後の角度、右側には回転方向の角度、上には方位計が表示されています。


細かな情報は写真よりもキャプチャデータの方が分かりやすいので、こちらも載せておきます。
レティクルはBDC仕様、色は白色で、背景の色によって白黒反転する仕様になっています。
背景が暗いと白色、明るいと黒色といった感じですね。

ちなみに、こんな風に画面上に映るUI事写真として保存されているので、撮影というより画面キャプチャーをしているようですね。
ジョイスティックを押すとメニューが表示されます。
基本的には説明書に記載されている通りなのですが、レティクルの設定を行う項目が表示されていませんでした。(説明書通りならWiFiの上にレティクル設定の項目がある)

ただし、レティクルの切り替えやゼロインが出来ない訳ではなく、ジョイスティックを前側に長押しする事で設定に入る事が出来ます。
ゼロインはX方向、Y方向にレティクル自体を移動させて行う、一般的なデジタル工学照準器と同じ方法になります。
その為、画面上に表示されるレティクルの位置が変わります。
設定はA〜Jの10種類を保存しておく事が可能です。

レティクル形状はレティクル表示無しとレティクルパターン8種類の計9種類の中から選ぶ事が出来ます。
MILハッシュ付きの十字レティクルとBDC、EoTechホロサイトのようなサークルレティクルが用意されています。

尚、5.56mm弾用レティクルには2種類が用意され、5.56x45mm Winchester弾と5.56mm Federal弾(NATO弾と思われる)の2種類。
専用レティクルはレティクルの下に弾の名前が表示されます。

レティクルの色は白、黄色、黒の3色が用意されていました。

WiFiは対応アプリと連携してサーマルイメージャーの映像をリアルタイムで表示させる事が出来るようです。
説明書にはVFC for Androidを推奨しています。


Hトラッキング設定を有効にすると、画面内の一番熱い所に青色のカーソルが表示されるようになります。(1枚目の写真はAC電源、2枚目の写真はDACを撮影した様子)
カーソルがピコピコ動き回るのでめちゃくちゃ鬱陶しいですが、熱源を探す参考にはなると思います。


言語設定は中国語、英語、ロシア語の3言語に対応しています。

アイレリーフとアイボックスについて
本製品のアイボックスは非常に狭く、ピンポイントで適切な位置から覗かないと画面が歪んでしまい見えづらいです。


これ自体はレンズ越しにモニターを見るという仕様になっているサーマルイメージャー全体的に同じなのですが、それにしてもアイボックスはかなり狭いです。
ただ、iRay RH25よりかは広いので個人的にはまだ覗きやすい方だなという印象がありました。
検知の精度について
という訳で、LK640並びにLK384で熱源を見てどの程度映るのかを見ていきます。
共に1倍の状態での見え方なのですが、これはあくまでデジタルズームがされていない状態というだけで予めLK640が1.95倍、LK384が3.37倍の倍率が付いているので拡大されている見え方になっています。


LK640で2倍、4倍と倍率を上げるとこんな感じ。
本体による倍率変更はデジタルズームなので、映像は少し荒くなりますが元の解像度が640サイズなのでそこまで凄い荒れる訳では無いです。


LK384で2倍、4倍と倍率を上げるとこんな感じ。
こちらはセンサー解像度の低さが大きく出ている感じで、エッジがぼやけているというかジャギっている感じの見た目になっています。


また、LK640、LK384共に極性/画面表示は8種類の中から選ぶ事が出来ます。
左上から順に下記の通り。
- WH-HOT(白が熱く、黒が冷たい)
- BK-HOT(黒が熱く、白が冷たい)
- IN-HOT(黄色が熱く、紫が冷たい)
- DESERT-YW(紫が熱く、黄色が冷たい)
- GN-HOT(黄緑が熱く、青が冷たい)
- RD-HOT(WH-HOTベースで特に熱い場所が赤になる)
- Sky(空用モード、見た目はWH-HOT)
- EDGE(熱源の輪郭が白く表示される)

屋外で覗いてみた感想
屋外でLK640とLK384を覗きつつiRay Pfalcon 640+ RH25との比較をしていきます。
尚、全てホワイトホットの状態にしています。
また、LK640とLK384は動画他機種で解像度違いなので比較として成立していますが、RH25に関しては価格帯が倍近く異なっている製品なので、比較として使えるかは微妙な所です…。
まずは40m先の木の横に居る人を映した状態から。
カメラでの見え方とiRay RH25での見え方はこんな感じです。


LK640とLK384での見え方はそれぞれこんな感じ。
LK640の方はしゃがんだ状態になっていますが、こんな感じで検知出来ます。


熱源の分解性能は間違いなくRH25には及びませんが十分人形を視認出来るような性能はありますし、奥の方にある草木の濃淡も表示されている事が分かります。
続いて、草むらの後ろ側に居る人を見た時の様子で、今度は20m先の草の裏側に被写体に立ってもらっています。
サーマルイメージャーを使用するシチュエーションとしては一番これが多いと思います。


RH25だとこんな感じ。
温度の低い草むらの後ろ側に白いシルエットが見えるので「後ろに何かある」事が分かります。

LK640とLK384はそれぞれこんな感じ。
視野角が狭く情報量が少ない分、LK384の方が視認性が高い印象があります。
LK640の方は温度の分解性能の問題もあってか全体的に明るいというか、白くなってしまっています。


iRay RH25と比較して感じた事なのですが、同じセンサー解像度を持っていても分解性能が同じとは限らず、全体的に視認性はRH25の方が高い印象がありました。
また、視点を動かした際に気になったのですがディスプレイの垂直同期が取れていないような見た目で映像が波打ったような表示になる事がありました。
もしかしたらセンサーから取得した情報を処理する速度が足りておらず、ディスプレイのリフレッシュレートの高さを活かしきれていないのかも知れないです。
この辺りはもしかしたら今後のファームウェアアップデートで改善されるかも知れないですが、現状はそれなりに気になる程度にはブレていました。
データの取り出しについて
撮影したデータは本体をUSBケーブルでPCに繋ぐ事で抜き出す事が出来ます。
28.8GBのUSBドライブとして認識、ファイルフォーマットはFAT32で、デバイス名は『Linux File-Stor Gadget USB Device』となっていました。

カタログスペック上の容量は64GBとなっているのにドライブの容量が28.8GBとなっているのはOSというか制御ソフトの領域(いわゆるシステム領域)なども含めて64GBだからなのかも知れないですね。
また、USBドライバーの問題なのかMac OSでは認識しませんでした。
Windows 11ではすんなり認識したので、注意が必要でしょう。
ディレクトリ構成は「video」「updater」「image」の3つ。
updaterには恐らくソフトウェアアップデート用のファイルを入れる物と思われます。

という訳で、Raider Thermal Imager LK640とLK384のレビューは以上になります。
個人的に本製品のメリットは値段の安さにの割に解像度・温度の分解性能が十分にあるという点です。
結局の所、サーマルイメージャーの性能はセンサーが捉えた熱の情報を映像化する性能と直結しますからね。
また、操作がジョイスティックで行えるのも好印象です。
RH25のボタン同時押し、長押しを駆使した操作と比べると直感的に操作する事が出来るので、普通に便利です。
反面、ソフトウェアはもうちょっと改良の余地があるのかなという印象がありました。

RAIDER THERMAL LK640 ハンドホールド、ウェポンマウントサーマルイメージャーを購入するhttps://www.nanbandou.net/SHOP/140641.html
RAIDERTHERMAL LK384 ハンドホールド、ウェポンマウントサーマルイメージャーを購入するhttps://www.nanbandou.net/SHOP/140384.html