
Raider Thermal Imager LK-MINI635(640×512/12μm)のレビュー
記事作成日:2024年10月21日
89式パーツとナイトビジョン専門ショップ、南蛮堂様からのご依頼でRaider製のサーマルイメージャー、『RAIDER LK-MINI635』をレビューしていきます。

本製品は同社のサーマルイメージャー、RAIDER LK640の小型モデルのような製品で、外観が大きく変わっているのが特徴です。
また、ソフトウェアも変わっているようでインターフェースや操作性が大きく異なっています。
また、NETDと拡大率のスペックがLK640と異なっています。
スペックは下記の通りです。
- センサー解像度:640×512/12μm
- レンズ:35mm
- NETD(温度分解能):<50mk@300K
- フレームレート:50Hz
- ディスプレイ:1024×768, 0.39inch OLED
- FOV:12.6° x 10.1°
- 光学倍率:1.98〜7.9倍
- デジタル倍率:1x、2x、4x
- アイリリーフ:45mm
- 視度調整範囲:-5+5
- バッテリー:16340リチウムイオン電池×2
- 内部ストレージ:64GB
- 重量:480g(バッテリーなし)
- 大きさ:208x57x58mm(アイピース、レンズキャップ込み)
- 保護等級:IP67
- スタンバイ時間:2時間
南蛮堂販売価格:399,000円 (税込)
RAIDER LK640よりも4万円ほど安い値段で販売されており、640サイズのセンサーを搭載しているサーマルイメージャーとしてはかなり安価な部類の製品になります。
RAIDER THERMAL LK-MINI635 ハンドホールド、ウェポンマウントサーマルイメージャーを購入するhttps://www.nanbandou.net/SHOP/140642.html
化粧箱を開けるとナイロンケースが入っており、この中にサーマルイメージャー本体が入っています。


付属品の紹介
内容物はナイロンケースとサーマルイメージャー本体、説明書、保証書、USBケーブル、マウント、マウント固定用のネジ、クリーニングクロスです。

USBケーブルはUSB-A to USB-C。
本体とPCと繋いで撮影したデータの転送やファームウェアアップデートファイルの転送に使います。

マウントはこんな感じ。
ずっしりとした一本物のオフセットマウントが付属します。


サーマルイメージャー取付部は台形型の窪みが付いており、下部から4本のネジを使って固定します。
マウントの取り付けに関しては後述します。

特徴的なQDレバーが付いており、反対側のボタンを押す事でQDレバーが開きます。



レール中腹部には小さなネジが付いており、何かを取り付ける事が出来そうなのですが用途は不明。
脱落防止用のワイヤーを取り付けたりする為の物でしょうか。

取り付け用のネジとL字レンチはこんな感じで、ネジにはスプリングワッシャーが付いています。
この4本の太い六角穴付きボルトでマウントベースとサーマルイメージャー本体を連結させます。

説明書はLK-MINIシリーズ共通の物で、640と384のモデルが併記されています。
スペック表を見る限り、レンズサイズにバリエーションがあり、それによってFOVやNETDなどのスペックが変わってくるようです。
今回お借りしている製品のレンズサイズは35mmになります。



ナイロンケースはこんな感じ。
厚手のケースで、内側にはクッションが付いています。
蓋の内側に付いているポケットにはUSBケーブルなどを入れておく事が出来ます。



サーマルイメージャー本体の外観レビュー
という訳で、サーマルイメージャー本体を見ていきます。
角張ったハウジング形状の製品で、4つのボタンがハウジング上面に並んでいます。


対物レンズ側はこんな感じでレンズキャップが付いています。


対物レンズ側は回す事が可能で、ここを回す事でフォーカスを調節する事が出来ます。
また、レンズのフチには35mm/1.0-640とレンズサイズとF値、センサー解像度が記載されています。

ハウジング上部はこんな感じで、4つのボタンが付いています。
ボタンごとに形状が違っていたり、少し隙間が空いていたりして一応誤操作を起こしにくい仕様になっている気がします。

LK640/LK384に搭載されているジョイスティックが付いていないのが残念ですが、一応操作性を損なわないような工夫はされているようです。
ハウジング左側面には小さな20mmレールが、右側面にはUSB-C端子とバッテリー挿入部が付いています。


USB-C端子はラバー製のキャップで保護されています。

バッテリーの蓋はネジで固定されており、折りたたまれているノブを起こす事で回す事が出来ます。


バッテリーはCR123Aを2本使用します。
ただし、バッテリーの持続時間として充電式(リチウムイオン電池)の使用が推奨されています。
RCR123や16340と呼ばれる型番のバッテリーがそれにあたると思います。(SureFireのLFP123も使えるかも知れないです)
バッテリー挿入口の+-表記に合わせてバッテリーを入れます。

尚、保護回路付きの電池だとCR123Aよりも少し長い事もあってか蓋がかなり閉めづらくなります。
防水パッキンを押し潰しながら入れるような感じになるので、可能であればCR123Aと同サイズのRCR123/16340を用意した方が良いです。

ハウジング底部にはマウント固定用のネジ穴が空いています。
これはLK640/LK384系と同じ規格で、キャリングハンドルマウントのような形をしていますが1.5倍位の幅がある専用規格のマウントなので、恐らく社外製のマウントベースを使う事は出来ないと思います。

接眼レンズ側には視度調整ノブが付いています。

視度調整ノブを回すと接眼レンズが後ろに飛び出します。


接眼レンズ側に付いているアイピースは取り外す事が可能です。
このアイピースは簡単に取り外す事が出来ますが、逆に固定部が浅すぎて引っ掛けた時とかに外れてしまう可能性があります。


レンズコーティングについて
対物レンズはゲルマニウムで出来ているので、黒色のレンズで殆どの光を反射します。
接眼レンズ側は緑〜青系のマルチコートが施されています。


接眼レンズは30mm近くあり、非常に大きいです。
マウントベースの取り付けについて
マウントベースの取り付けには付属の4本の六角穴付きボルトを使用します。
また、取り付け位置は前後に調節する事が出来ます。

取り付けようと思ったのですが、ネジの梱包ミスが発生していたようで適切な長さの物が付属してきませんでした。
ネジの太さは合っているのですが長すぎてマウントが固定出来ませんでした。(恐らくLK640/LK384用の長いネジが入っていた)
本来は本製品に適合する、短いネジが付属するはずです。


モニターのUIと設定、見え方について
電源を投入すると『Welcome』と表示され、5秒後暗いにモニターが点灯、UIが表示されます。
中央にはレティクルが表示され、左側には前後の角度、右側には回転方向の角度、上には方位計が表示されています。


細かな情報は写真よりもキャプチャデータの方が分かりやすいので、こちらも載せておきます。
こんな風に画面上に映るUI事写真として保存されているので、撮影というより画面キャプチャーをしているようですね。

メニュー画面はこんな感じで、左側にメニューが表示されます。
また、WiFiは対応アプリと連携してサーマルイメージャーの映像をリアルタイムで表示させる事が出来るようです。
説明書にはVFC for Androidを推奨しています。


言語は中国語と英語の2つ。

倍率について
LK-MINI640はデジタルズームの1倍、2倍、4倍が用意されています。
1倍率の時の見え方はこんな感じ。
倍率の表記は画面右下、日付が表示されている箇所の横に表示されています。

2倍、4倍の見え方はこんな感じになります。


ゼロイン・レティクル形状の変更機能とゼロイン設定の保存機能
ゼロインやレティクル形状の変更機能について説明します。
まず、プロファイル(銃の種類)をA〜Jまでの10種類の設定を保存しておく事が可能です。

レティクルの形状は0番(レティクル表示無し)を含めて7種類。
2と5はレティクルの外周に大きな円が描かれているのが特徴、3と6円無しといった感じです。

レティクルの色は赤、緑、青、白の4色。

極性の切り替え機能について
極性/画面表示は8種類の中から選ぶ事が出来ます。
左上から順に下記の通り。
- WH-HOT(白が熱く、黒が冷たい)
- BK-HOT(黒が熱く、白が冷たい)
- IN-HOT(黄色が熱く、紫が冷たい)
- DESERT-YW(紫が熱く、黄色が冷たい)
- GN-HOT(黄緑が熱く、青が冷たい)
- RD-HOT(WH-HOTベースで特に熱い場所が赤になる)
- Sky(空用モード、見た目はWH-HOT)
- EDGE(熱源の輪郭が白く表示される)

屋外で覗いてみた感想
屋外でLK-MINI640を覗きつつ、LK640及びiray Pfalcon 640+ RH25との比較をしていきます。
尚、全てホワイトホットの状態にしています。
まずは40m先の木の横に居る人を映した状態から。

LK-MINI640、LK640、RH25でそれぞれこんな感じ。
LK-MINI640とLK640はハウジングサイズが違うだけで見え方は同じハズなんですが、視野角が若干LK-MINI640の方が広く、画面の色温度もだいぶ寒色系である事が分かりました。



続いて、草むらの後ろ側に居る人を見た時の様子で、今度は20m先の草の裏側に被写体に立ってもらっています。
サーマルイメージャーを使用するシチュエーションとしては一番これが多いと思います。


LK-MINI640、LK640、RH25でそれぞれこんな感じ。
色温度が違うだけで識別性能はLK-MINI640とLK640で大きな差はなさそうですが、少し白飛び気味のようなのでLK640の方が見やすい気がします。
どちらにしろRH25のようなクッキリさはく、温度が低い草木も結構白っぽく表示されます。



バッテリーの持ち具合について
CR123Aサイズのバッテリー2本を使用するという事で、この手の製品を触ったことがある人ならバッテリーの持ち具合に関して気になる人も少なくはないと思います。
結論を言うとお世辞にもバッテリーの持ちが良いという訳では無く、CR123A(3.0V)に関しては電源を投入して10分程度でバッテリー切れとなり、電源が切れました。
そもそも電源投入直後からバッテリー残量が殆ど無い状態でしたし…。
ただ、これはCR123Aが空になった訳ではなく、電圧でバッテリー残量を把握するシステムのせいだと思います。
一方、16340リチウムイオン電池(3.7V 850mAh)に関しては満充電の状態から1時間半稼働させ続けても半分以上残っていました。

CR123Aではなく16340が推奨されているのは、バッテリーの持ち具合とか消費電力の問題ではなく、元々そういうシステムだからだと思われます。
LK640との比較
フルサイズモデルであるLK640と比較してみます。
LK-MINI640はLK640のコンパクトモデルというだけあって確かにハウジングは小さくなっています。
ただし長さ自体はほぼ同じなのでそこまで小さくなっている感じはありません。


外付けのバッテリーボックスが無くなり、内蔵バッテリーになりハウジングから飛び出しているジョイスティックが無くなりボタンになっているという感じの仕様ですね。

ハウジングを薄くしたかったのかも知れませんが、LK640に付いているジョイスティックは残しておいて欲しかった所ではあります。
サーマルイメージャーにおいては一番使いやすいインターフェースだと思いますので…。
データの取り出しについて
撮影したデータは本体をUSBケーブルでPCに繋ぐ事で抜き出す事が出来ます。
29GBのUSBドライブとして認識、ファイルフォーマットはFAT32で、デバイス名は『Linux File-Stor Gadget USB Device』となっていました。

カタログスペック上の容量は64GBとなっているのにドライブの容量が29GBとなっているのはOSというか制御ソフトの領域(いわゆるシステム領域)なども含めて64GBだからなのかも知れないですね。
また、USBドライバーの問題なのかMac OSでは認識しませんでした。
Windows 11ではすんなり認識したので、注意が必要でしょう。
ディレクトリ構成は「video」「image」の2つです。

という訳で、Raider Thermal Imager LK-MINI635のレビューは以上になります。
バッテリーボックスやインターフェースがハウジングから飛び出していないスリムなデザインになっている反面、直感的な操作がやり辛くなっているのが残念なポイントですね。
その分、LK640よりも少し安くなってはいますが…。
バッテリーに関しては850mAhのリチウムイオン電池を使って恐らく長く持っても2時間ちょい、3時間持つかどうか?といった感じなので、長時間使う可能性がある場合は複数本の電池を用意する必要がありそうです。

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