
iRay PFN640+ V2のクリップオンモードでの使い勝手について
記事作成日:2025年2月26日
先日レビュー記事を書いたiRay PFN640+ V2ですが、軽く触れた程度だったクリップオンモードでの見え方について紹介する事にします。
尚、マウントは『InfiRay Outdoor RICO MICRO PICTAIL Helmet/Weapon Shoe』と『InfiRay Outdoor Rico Micro MQD Mount American Defense』を使用しています。


クリップオンというのは別の光学サイトと組み合わせて使用する事で、タンデムとも呼ばれます。
サーマルイメージャーと既存の光学サイトを組み合わせるにあたって注意しないといけないのは、サーマルイメージャーで使われているレンズの問題で、『対物レンズより前にサーマルイメージャーを取り付ける必要がある』という事です。
サーマルイメージャーは熱の波長(いわゆる近赤外線〜遠赤外線)をセンサーに伝える必要がある製品なので、熱を吸収したり反射させない(させにくい)素材をレンズに用いる必要があります。
スコープのレンズに採用されているガラスは可視光線は透過しますが熱を反射してしまうので、サーマルイメージャーの前にガラスレンズを配置する事は出来ません。
その為、サーマルイメージャーの液晶をスコープを使って覗くというようなレイアウトのみ可能となります。

また、サーマルイメージャーなら何でもクリップオンが可能かと言うとそういう訳では無く、クリップオンに対応した製品である必要があります。(無理やり使う事は出来るかも知れませんが、実用的では無いでしょう)
PFN640+は初代の頃から単体使用とクリップオン両対応のサーマルイメージャーです。
クリップオンモードについて
PFN640+ V2のクリップオンモードはメニューから表示モードを切り替える事で使えるようになります。
左が単体使用モード、右がクリップオンモードの見た目です。


この通り、クリップオンモードにする事で画面が小さくなります。
また、メニューの内容にも変化があり、画面下部に表示されていたバーが中央に移動し、23個あったメニューの項目が12個に減ります。
大きな変化としてはレティクル回りの設定が無くなったり、GPSリセット、画素欠陥補正などが無くなっている他、メニュー外の項目としてデジタルズームも効かなくなります。



また、PFN640+ V2の撮影機能は画面に表示されている内容をキャプチャしているだけのようで、UIなども含めて撮影されます。
その為クリップオンモード時に撮影を行うと、周囲が黒塗りになった状態で撮影されます。


クリップオンモードはレティクルのゼロイン設定が出来なくなる変わりに、画面表示を上下左右に移動させる事が出来るようになります。
画面移動のショートカットは電源ボタンとメニューボタンの同時押しです。
これで画面を上下左右に移動させるモードに入る事が出来ます。


実際の画面の動きはこんな感じです。
表示領域自体が動いている事が分かると思います。
PFN640+ V2のクリップオンモードでの画面表示上下左右移動について。
— エボログの中の人 (@Evolutor_web) February 24, 2025
クリップオンモードでは組み合わせる光学サイトのゼロイン設定とサーマル側の画面の位置を合わせる為に表示される映像の上下位置を動かす機能が備わっています。 pic.twitter.com/Xuo04Fp0tj
1倍プリズムサイトとの組み合わせ
では実際にクリップオンモードで光学サイト越しに覗いた様子を紹介していきます。
まずは初代PFN640+でよく組み合わせて使っていた1倍プリズムサイトとの組み合わせから。
検証に使用したプリズムサイトはPrimary Arms SLx 1X Micro Prismです。

この組み合わせは初代PFN640+と大きな違い無く使う事が可能で、使い勝手も良いですね。
ただ、固定倍率なので拡大して見たいという要望を叶える事は出来ません。
ショートスコープとの組み合わせについて
続いて、これもよく使う組み合わせでショートスコープとの組み合わせです。
検証に使用した製品はPrimary Arms Platinum Series 1-8X24mmです。
本製品は低倍率時のFOVが広い為、1倍率時は画面がほぼ全て見えている状態になります。

倍率を上げていきます。
PFN640+ V2はディスプレイの解像度が1440x1080pxもある為に1.5倍、2倍であれば、ドットの粗さも気にならず使う事が可能です。


尚、初代PFN640+だと2倍率を超えた辺りからドットの粗さが気になり始め、せいぜい3倍率位が限界でしたが、PFN640+ V2ではまだまだ全然平気ですね。
倍率を3倍、4倍と上げていくとこんな感じです。
4倍率まで上げてようやくドットが気になり始めますが、まだまだ使えるレベルです。


これなら1倍/4倍切り替えのELCANとの組み合わせも行けそうですね。
ただし、倍率の拡大は5倍位が割と限界で、それ以上の倍率だとかなり荒くなってしまいます。
特に6倍以降はピントもうまく合わなくなってきます。


倍率の変化を動画で撮ってみました。
PFN640+ V2と1-8倍のショートスコープの組み合わせ。
— エボログの中の人 (@Evolutor_web) February 24, 2025
初代は2倍率を超えた辺りでディスプレイのドットが気になり初め、実用性のある倍率はせいぜい3倍率たのですが、V2はモニターの解像度が上がっている事もあってか、4〜5倍率位までは問題無く使える感じです。 pic.twitter.com/NGyuB9Qkv5
ドットサイト
最後にドットサイトとの組み合わせも紹介します。
PFN640+ V2でアイレリーフはかなり長くなり、実はEXPSサイズ程度であればギリギリディスプレイを覗く事が出来るようになっています。
ただし、ホロサイトの接眼レンズ側を極端に目に近づけた状態にしないといけないので、「一応覗ける」というだけで実用性のある状態で覗ける訳では無いです。
かなり無茶して覗いている感じになります。

スコープやプリズムサイトなどと違ってドットサイトとの組み合わせだとPFN640+ V2側のアイレリーフに依存してしまいますからね。
どうしてもドットサイトを使いたいならマグニファイアを併用すると良いと思います。
尚、自然な距離で覗こうとするとどれだけディオプターを調整してもピントが合わなくなります。
パキッとした綺麗な像を求めないならまあ、これでも覗けると言えば覗けているんですが…。

という訳で、iRay PFN640+ V2のクリップオンモードのレビューは以上になります。
格段に覗きやすくなったPFN640+ですが、接眼レンズの性能及びモニターの解像度が上がった事によりスコープとの組み合わせもかなりやりやすくなった印象があります。