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ナイトビジョン用中華レンズ新作、PVS14互換の広角58度レンズを試してみました

記事作成日:2025年6月23日

AliExpressにて販売されている中華系新型レンズを購入してみたので、レビューしていきます。
こちらのレンズは『新しい 58 度 PVS14 接眼レンズと対物レンズ 1x スーパー視野組み合わせセット、ナイトビジョン用』という名前で販売されている、視野角58度という非常に広い視野角を持っているレンズのセットになります。(毎度の事ながら中華製品には明確な製品名が無いので困ります…)

尚、2025年6月現在、対物レンズと接眼レンズのセットで33,616円とかなり安価な価格帯となっています。

基本的に広角レンズは対物レンズで大きな歪みを発生させ、それを接眼レンズで補正する仕様になっているので、対物レンズと接眼レンズをセットで使わないと最適な像にはならない事がほとんどです。

注文して2週間程度で到着。
このような感じで透明のケースに対物レンズと接眼レンズがそれぞれ収まっています。

内容物について

本製品の内容物はこんな感じで、レンズ本体とピンホールキャップ、対物レンズ用のストッパーリング、アイピースリングです。

レンズセットの外観レビュー

対物レンズはこんな感じで、若干厚みは薄めで特徴的なデザインのスリットが入っています。
レンズサイズは割と小さめで、濃い青色のコーティングが施されています。

接眼レンズ側はこんな感じで、赤、オレンジ、紫などに反射するレンズコーティングが施されています。
レンズは大きく丸みを帯びており、かなり強めの魚眼レンズになっている事が分かります。

ガワのデザインもレンズの仕様もかなり特徴的な物になっています。

Carsonレンズ(40度レンズ)との外観比較

PVS14用の官品レンズとしても採用されているCarsonレンズと比較してみます。
尚、Carsonレンズの視野角は一般的な40度となっています。

まずは対物レンズ側から。
レンズサイズは58度レンズの方が一回り以上小さい事が分かります。
また、全長も若干58度レンズの方が短いです。
コーティングは似たような感じですね。

接眼レンズ側はこんな感じで、こちらも全長が短い事が分かります。
レンズコーティングはCarsonの方がパープル味が強いです。

PVS14に取り付けた際の見え方について

こちらのレンズをPVS14に取り付け、40度レンズであるCarsonレンズとどのように見え方が異なっているのかを検証してみます。
尚、こちらのPVS14に入っている増倍管はOMNI7の緑管(詳細なスペックは不明)です。

という訳で、まずは屋内で2m程度の距離での検証から。
共に接眼レンズにカメラのレンズをくっつけた状態で撮影しています。(カメラの設定は共に同じ)
視野角の違いは一目瞭然なんですが、明らかに58度レンズの方が薄暗く、若干解像度も下がっている事が分かります。

Carsonレンズ
58度レンズ

像の歪みはそこまで気になるような物では無く、無理無く視野角を広げている印象がありますが、アイボックスがかなり狭く、アイレリーフも短い為少なくとも眼鏡を装着している状態で正しく覗く事が出来ませんでした。(眼鏡に接眼レンズがぶつかる距離でもギリギリ適切なアイレリーフになっていない)

アイレリーフはCarsonレンズのアイレリーフが15〜20mm程度あるのに対し、58度レンズは10mm未満といった感じです。

また、58度レンズの方はフチが少しぼやけている事から分かる通り、実際はこの写真以上に視野角があります。(カメラのレンズの都合上、写真で撮るにはこれが限界でした)

それと、58度レンズは明らかに被写界深度が浅いです。
Carsonレンズも被写界深度が深いとは言えないですが、58度レンズはそれ以上に浅く、ピンポイントでピントを合わせる必要がありました。(これにより、近い距離の物を見るのが少々大変)

カメラの位置を適切なアイレリーフから少し離した様子はこんな感じ。(※こちらは画像のサイズを合わせています)
Carsonレンズの方は若干視野が狭くなるだけで解像度などの変化はありませんが、58度レンズの方は明らかに像が滲んでしまいます。

Carsonレンズ
58度レンズ

上の写真の中心部を拡大した様子はこんな感じ。
左がCarson、右が58度レンズです。
Carsonは適切なアイレリーフな状態で覗いていなくてもある程度パキッとした感じの像が維持されていますが、58度レンズは少しでも適切なアイレリーフから外れるとぼやけてしまいます。

常に適切なアイレリーフを維持する事が出来るなら58度レンズでも問題は無いのですが、極端にアイレリーフが短い為、ヘルメットやNVGマウントの形状によってはそもそも適切なアイレリーフで覗く事が出来ない可能性があるので、これはかなり大きな問題だと思います。

自分はTeamWendyのヘルメットとGSCIのNVGマウントの組み合わせでギリギリ覗く事が出来ましたが、WilcoxのNVGマウントを使うとそもそも覗くける距離まで持ってくる事は出来ませんでした。

続いて、視点を少しズラした時の様子。(※こちらも画像のサイズを合わせています)
共にレンズの左端がケラれるような状態にしています。
結果、Carsonレンズに関しては歪み・滲みは控えめですが58度レンズの方はかなり大きく歪み、滲みも大きくなってしまいました。

Carsonレンズ
58度レンズ

上の写真の中心部を拡大した様子はこんな感じ。
左がCarson、右が58度レンズです。
Carsonレンズでも少しパキっとした感じは損なわれていますが、滲みはかなり控えめであるのに対し、58度レンズは明らかに像が横方向にブレてしまっている事が分かります。
また、像の位置も大きくズレてしまい、視点を動かすとグニグニ歪んで見えます。

歪みの激しいスコープを覗いているような感じになり、これを覗きながら歩いたりするのは現実的では無いほど歪んでしまっている印象です。
人によっては酔ってしまう気がしますね。

続いて、視野角の広さをより体感出来そうな屋外での様子。
橋の上から川を覗いている様子です。
視界内の情報量は一目瞭然だと思います。
ただ、58度レンズの方は若干薄暗く、コントラストも少し低い感じがします。

Carsonレンズ
58度レンズ

実際に使ってみた感想

先日、修善寺虹の郷にて開催された広域ファスガン夜戦で早速使ってみましたが、自分は1ゲームで使用を断念しました。
実はこちらのレンズが届いたのが虹の郷に行く前日で、上記検証を行う前でした。
詳しく見る時間も無いし、「現場で実際に使いながら確認してみよう」と思っていたのですが、全然駄目でしたね…。

というより、最初のうちはギリギリ我慢出来たのですが虹の郷の暗い所に差し掛かったタイミングで「こりゃ駄目だ」となりました。
Carsonレンズに比べて明らかに光を集める性能が低く、ものすごい暗くなってノイズまみれな像になってしまったんですよね…。
いくら視野角が広くても、見えなければなんの意味もありません。

また、歩く事による揺れで視界がグワングワンと揺れ、非常に不快な使用感になっていたのも、大きな問題でした。

どれだけヘルメットをガッチリ固定してしても多少の揺れはNVGに伝わってしまうので、これに関しては接眼レンズの性能に依存しちゃいますね…。
やっぱりNVGのレンズはアイボックスは広く、かつ少しズレた所から覗いても歪みが抑えられていないと使い物にならないです。

そんなこんなで、1ゲーム終わって速攻Carsonレンズに戻しました。(結果、Carsonレンズ装着時の様子しか写真撮ってない…)

58度レンズのメリット・デメリット

58度レンズのメリットはなんといっても、その視野角の広さでしょう。
一般的な40度よりも18度も大きいので、非常に広い範囲を見渡す事が出来ます。
例えば、階段を降りる時、ガッツリ下を向かなくても段差を見る事が出来ます。

正直、メリットはこの程度でデメリットはかなり多いです。

  • 像が暗い(暗い所だと本当にOMNI7かと思える位に暗くなる)
  • アイボックスが狭く、少しズレるとボヤケたり像が歪む
  • アイレリーフが短く、NVGマウントやヘルメットの種類によってはまともに覗けないのと、眼鏡やアイウェア装着時はまず使えない
  • 被写界深度が浅く、ピント調節がかなりシビアでピンポイントで合わせる必要がある

という訳で、これらのデメリットを58度の視野角が上回るかと言われると全然そんな事は無く、「これなら40度で良いよ」ってなりました。
視野角狭いなら狭いなりに首降れば良いだけですし…。


という訳で、中華58度レンズのレビューは以上になります。

PVS14というナイトビジョンが登場してかなり時間が経ち、軍用・民生用問わず多くのメーカーがPVS14互換のレンズやハウジング、増倍管などを作っていますが、大手メーカーの各社が視野角を確保する為に、レンズによって視野角を広げるのではなく、左右を見渡す為の物を追加した4眼を作ったり、パノブリッジのようなハの字型に開くアーム・ハウジングを開発している理由が何となく分かりました…。

多分技術的に40度レンズと同等の使い勝手で視野角だけを広げるのは無理なんでしょうね…。

ただ、視野角が58度になった状態を見るのは面白いので、そういうのに興味がある人は買っても良いんじゃないかなと思います。
そんなに高く無いですし…。