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電子トリガーの組み込みや配線の調整で気をつけているポイント【E&C 329E COLT M653内部カスタム】

記事作成日:2022年8月31日

開封レビュー分解レビューを行ったE&C 329E COLT M653の内部を弄っていくのですが、いつも通りの内容だと対した変化が生まれないので、ちょっと深堀りした記事を小分けして投稿していく形にしてみようと思います。

という訳で、当記事では『電子トリガーの組み込みや配線の調整で気をつけているポイント』という事で、電子トリガーの組み込みに重点を置いて紹介していきます。
主に個人的にいつも考えているパーツの選び方、組み込み時に気をつけている点を紹介していきます。

尚、当記事の内容は今回やろうとしている構成を実現する為の物なので、カスタム内容によってはパーツ選びにおいて大きく考え方を変える場合もあります。
ただ、調整方法に関してはどのようなカスタムであっても、大きな違いは無いと思います。

また、精密射撃に特化するようなカスタムに関しても少し考え方が変わってくるのでその点ご了承下さい。(精度に関する話しは少し記事中でも触れます)

あと、個人的な話しなので別にこれが正解という訳でも無いので、そちらもご了承下さい…。

全体のざっくりしたカスタム内容について

まずカスタムをする上で全体をどういう構成にするかを、ざっくりでも良いので考える必要があります。
どんな物事でも設計が無いと何も出来ず、行きあたりばったりでうまくいく事は少ないです。

基本的に自分はエアガンを買う前に「こんな感じのにしよう」と非常にざっくりした事を考えており、分解時に「このパーツを買い足さないといな、このパーツはこれが使えるな」という事を考えながら分解しています。
また、カスタム前に必要になるパーツを一通り購入し、カスタムは用意したパーツを組み立てていくだけという作業になります。

特殊な構造の製品だと分解しながら「こういう構造なら、こういう事も出来るのか」みたいな事を思いついて、やってみる事もありますが、基本的には元々やりたかった事を実現する事が多いです。

今回の構成のコンセプトは『ロングバレル版 次世代MP5A5』で、要点は下記

  • バレル長はなるべく純正サイズのまま(363mm)
  • シリンダー容量は極力少なくし、加速シリンダーを活かす
  • 強いHOPを掛けた時でもしっかりBB弾を押し出せる重いピストンと、程よい硬さのピストンスプリング
  • 低回転ハイトルクモーターを使ってサイクルはあまり速くならないようにしつつ、オーバーランも少なめに
  • モーターの回転数の少なさを補う為に16:1のギアを組み込んで、発射サイクルを調整
  • HOPパッキンは在庫処分として、さっさと消費したい奴を適当に

こんな感じで考えています。

電子トリガーの選定について

電子トリガーの選定の前にまずは定義の話しから少ししようと思います。

なにを持って電子トリガーとするか

最近「電子(制御)トリガー」という名前が一般的になっているので自分も「電子トリガー」と呼ぶ事がありますが、昔はFCU(Fire Control Unit)や電子制御ユニットなどと呼ぶ事が多かった気がします。
個人的にはこの電子トリガーという言い方があんまりしっくり来ては無いんですが、まあ各種メディアや販売店も使うメジャーな言い方になってるので、分かりやすさ重視なら「電子トリガー」と呼ぶのが良いでしょう。

自分は今でもよくFCUと言うので、当記事では「電子トリガー」と「FCU」という言い方が混在してます。

昔は高級カスタムパーツの一種でしたが、最近は標準搭載されていたり、国内メーカーだと東京マルイが次世代MP5A5で本格的なオリジナルの電子トリガーが採用されたり、KSCがストラックTEGに不知火 陽炎シリーズを入れて発売したりしており、かなり一般的になってきている印象があります。

次世代MP5のFCU、TOKYO MARUI Ver2.0

電子トリガーの定義や解釈は様々で、後付けのバーストコントロールユニットやプリコックユニット、更にはFETの事を電子トリガーと呼称しているケースもありますが、個人的にはトリガーやカットオフの入力をセンサーで検知し、プログラムによって何かしらの処理、制御がされていれば電子トリガーという感じで捉えています。

あくまで自分の考え方になりますが、例えばFETやコンデンサは処理をしているのでは無いので、これだけだと電子的な制御がされていないので、電子トリガーとは呼べないと思っています。

電子トリガーを組み込む理由について

電子トリガーを組み込む理由は、電子トリガーに備わっている様々な機能を使いたいからというのが最も大きな理由なのですが、それ以外にも「動作の安定性向上」という物もあります。

スタンダード電動ガンは様々な機構の組み合わせで動作しているので、各パーツの微妙な寸法差や相性、精度の問題で動作が安定しない事があります。

そういった問題を電子トリガーを組み込む事で、簡単に解決する事が出来ます。

ただし、電子トリガーを組み込む場合物理スイッチの状態で安定した動作を実現出来ている事に越したことは無い(単純に電子トリガーを組み込んだ後のトラブルが減る)ので、個人的には物理スイッチの状態で十分な動作テストを行う事をお勧めします。

駆動系吸気系の調整を行なう際に外付けのスイッチを用いている理由も、電子トリガーを組んだ際にトラブルが起きないようにする為です。

今回行っている、外付けのスイッチを用いた動作チェック

当記事で紹介する電子トリガー組み込み記事を見て頂いても、最初は必ず物理スイッチで組んで十分な作動を確立させてから、組み込んでいる事が分かると思います。

ただし今回、E&C 329E COLT M653の調整においてはちょっとイレギュラーで元々電子トリガーが組み込まれており、それを置き換える形で別の電子トリガーを組み込むので省略しています。

電子トリガーの対応状況について

という訳で、そんな電子トリガーの選定についてですが、まずは自分が組み込むメカボックスに合う規格の製品の中から選ぶ必要があります。

最近は様々なメーカーから様々な仕様の電子トリガーが発売され、一見選択肢がとても多いように思えますが、基本的には既存のトリガーを置き換える形で取り付ける都合上メカボックスの形状によって対応機種が限られます。

例えばVer2メカボックスやVer3メカボックス用の電子トリガーは様々なメーカーから発売されていますが、それ以外のメカボックスはかなり少ないです。

Ver2用FCU、Jefftron Leviathan-V2
ASG EVO3用FCU、Jefftron Leviathan EVO3

特にVer6、Ver7に関しては不知火 陽炎シリーズ位しか選択肢がありませんし、規格品ではない専用メカボックスなどはそもそも電子トリガーが存在しません。
その場合はFETのような取り付け方を行なう外付けの電子トリガー(機能性は専用品に比べて劣る)に選択肢が絞られます。

JeffTron PROCESSOR UNIT
PERUN AB
後継機種のAB+は設定可能な機能が増えている)

その為、そもそも自分が触っているメカボックスが電子トリガーを組み込む事が可能かどうか、組み込める場合はどういう製品があるのかを調べる必要があります。

また、対応するメカボックスであっても微妙な寸法差によってうまく組み込む事が出来ず、加工が必要になる場合もあるので、多少の加工程度は覚悟を行なう必要があります。
例えばVer2メカボックスのように思える形状でも東京マルイとKWC(KSC)やKRYTACでは若干スイッチ周りの形状が異なったりしています。

メーカーによっては対応メーカーやメカボックスのリスト、「このメカボックスだとここを加工しないといけない」など紹介している例もあるので、それを参考にすると良いでしょう。

電子トリガーの機能や性能について

電子トリガーを選ぶにあたって機能はかなり重要な要素です。
というか、電子トリガーとしての機能が欲しいからこそ電子トリガーを組む訳ですし…。

電子トリガーの機能としてよく使われる物は下記のものがあると思います。(他にも色々ありますが…)

  • アクティブブレーキ
  • プリコック
  • サイクルコントロール
  • バーストコントロール
  • セレクターポジションの変更
  • バッテリーセーフティ
  • デジタルヒューズ
  • センサーテスト

大抵の電子トリガーにはこれらの機能が搭載されていますが、製品によってはアクティブブレーキやプリコック、サイクルコントロールなどが付いていない物もあります。

アクティブブレーキについて

アクティブブレーキとはモーターに対して一瞬だけ+-逆の電気を流し、電気的なブレーキを掛ける機能の事です。
これにより通常なら慣性で暫くの間回転し続けてしまうモーターを急停止させる事が可能になります。
モーターブレーキと呼ばれる事もありますし、電動ガン以外の用語としては逆相制動やプラッギングブレーキとも(こっちの方が専門用語としては一般的なのかも?)呼ばれます。

ギアのオーバーランで困っている場合にこの機能を使う事で改善する事が出来ます。
例えばセミオートがバーストしてしまう、ギアの停止位置が不安定でレスポンスが安定しなかったり、変な位置で停止する事によりセミロックが起きてしまうなどを改善する事が出来ます。

設定内容はブレーキの強弱みたいなざっくりした物から細かくブレーキの強さを決めれる物など様々です。

基本的にブレーキを強くすれば強くする程慣性を抑える事が出来ますが、ブラシやコミュテーターの消耗が速くなったり、モーターの発熱が激しくなったりするので、注意が必要です。

また、モーター自体にFETが組み込まれているブラシレスモーターやSBDと組み合わせる場合はアクティブブレーキを使うのはやめておいた方が良いでしょう。(メーカーも推奨していないケースが殆どです)

プリコックについて

プリコックはカットオフから何秒間モーターを動かし続けるかという設定で、主にピストンの停止位置の調整の為に使われます。

基本的にはプリコックの段階の設定が出来るようになっており、例えば20段階で調節が可能な場合は1段階辺りカットオフが検知されてから10ミリ秒動かし続けるという設定になっていたりします。(機種によって段階数や秒数は様々)

製品によっては自動プリコック(電圧の上下を検知して程よい位置に設定される)機能が付いている物もありますが、逆に自動プリコックしか無い物も存在するので、機種を選ぶ際には設定可能な内容について注意が必要です。

また、プリコック設定を行なうとカットオフから一定時間の間は通電が止まらないので、仮にトリガーから指を離したとしてもギアは周り続けます。

トラブルとしてありがちなのは、プリコック設定時におけるピストンクラッシュです。
空撃ち状態だと何の問題も無い場合でも、弾を入れる事によりピストンの前進速度が遅くなり、ピストンが定位置に戻るよりも先にギアが回ってきてしまい、そのままピストンのラックギアを破壊するか、ピストンとセクターギアが噛み込み動作を停止します。
また、弾詰まりを起こした時もどうようの事が起きる場合があるので、プリコックの設定を行なう前に十分な動作テストやBB弾との相性チェックを行った方が良いでしょう。

サイクルコントロールについて

サイクルコントロールはフルオートの発射サイクルをマイナス方向で調節する事が出来る機能で、サイクルコントロール無しの状態が最大の発射サイクルになり、サイクルコントロールをする事で例えば秒間30発の発射サイクルを秒間20発などに落とす事が出来ます。

基本的にモーターをゆっくり回すのではなく、ギアが1回転する度にディレイを掛ける仕様になっているので、撃ち味はサイクルの遅い電動ガンではなく、セミオートを連打しているのに近いです。

例えばレスポンスを上げる為にDSGを組んだものの、フルオートの発射サイクルは抑えたい場合などに使います。

バーストコントロールについて

その名の通り2点バーストや3点バーストなどを行なう為の機能です。
昔からよくある電圧制御(電圧の上下を検知して発射段数をカウントする)や時間制御(任意の秒数通電させ続ける)のバーストコントロールとは異なり、カットオフを検知して発射段数をカウントする仕様なので、確実に任意の数を発射させる事が出来ます。

設定可能な項目は機種によって様々ですが、多い物だと100連バーストとかに出来る製品もあります。

基本的にはトリガーから指を離したタイミングで連射は止まりますが、まれに止まらない仕様(3点バーストに設定していたら3発打ち切らないと止まらない)の場合もあります。

セレクターポジションの変更について

セレクターレバーがセミの時にセミのままなのか、フルを撃てるようにするのかなどを設定可能にする機能です。

例えばVer3メカボックスの場合、AKだとセーフ→フル→セミの順番ですが、MP5KやG36などで使う場合はセーフ→セミ→フルの順番になります。
これらの入れ替えを行ったり、セーフ→3点バースト→フルに変えたり、製品によってはセーフティ状態を無くし、全てのセレクターポジションで発射を可能にする事も出来ます。

また、製品によってはバーストコントロールの設定内でセレクターポジションの変更も行なう場合があります。

バッテリーセーフティについて

バッテリーの電圧低下を検知して、FCUの動作を止める機能です。

基本的にはバッテリーの種類を設定し、任意の電圧まで下がると警告され動作を停止するケースが多いです。

バッテリーの出力が低い物、セルの劣化などによって出力が不安定な物などを使っているとまだバッテリーが十分残っているのにバッテリーセーフティが働く場合があるので、FCUを使う場合バッテリー側のスペックも気をつける必要があります。

デジタルヒューズについて

一般的な電動ガンにはヒューズという安全装置が配線に組み込まれています。
ヒューズは特定の電流が流れると物理的に断線する特性を持っている部品で、過電流による電装部品やバッテリーの破損を防止する装置です。

これを電子的に行なうのがデジタルヒューズです。
主にギアクラッシュや漏電などによる過電流を検知して動作を停止させます。

とは言え、デジタルヒューズが付いているからといって物理ヒューズが不要になる訳でも無いので、物理ヒューズは付けた方が良いと思います。(物理ヒューズの装着を推奨しているFCUもある)

センサーテストについて

センサーテストは一部のハイエンドFCUに搭載されている機能の1つで、カットオフやトリガー、セレクタープレートなどのセンサーが正常に機能しているかどうかを動作前に確認する為の機能です。

LEDの点滅でチェック出来るセンサーテスト(陽炎二型E)
Bluetooth接続を行ったスマホでチェック出来るセンサーテスト(Jefftron Leviathan)

これがあるだけで相当組み込みが楽になる上に、トラブルシューティングも容易なので、多少値段が張ってもこの機能が付いた製品を選んだ方が良いです。

その他の機能について

他にもバイナリトリガー(トリガーを引いた時と離した時の2発発射出来る機能)や、トリガーストロークの調整(検知位置の調整)、セレクター検知位置の調整などの機能、BluetoothやUSBなどでスマホやPCと接続をする事でFCU内のデータをリアルタイムでモニタリング出来たり設定をスマホやPCから行える物なども存在します。
例えばJefftron Leviathanシリーズ、GATE TITAN/ASTERシリーズなどはアプリ経由で設定する事が出来て便利です。

Jefftron LeviathanのiOS用設定アプリ

こういった色々な機能が電子トリガーには搭載されているので、自分が求める機能はどの電子トリガーに搭載されているのかを調べてから選択する必要があります。

また、機能だけではなくスイッチの構造についても考えておく必要があります。

電子トリガーのスイッチには主に4種類の物が存在します。

  • マイクロスイッチ/タクタイルスイッチ(タクトスイッチ)
  • 検出スイッチ
  • 光センサー
  • 磁気センサー

それぞれの特徴があるのと、調整時の癖もあるので電子トリガーはプログラムが違うだけでそれ以外は全部同じという訳ではありません。

マイクロスイッチ/タクタイルスイッチ(タクトスイッチ)について

スイッチを押した時に「カチッ」と軽いクリック感がある製品です。
基本的にトリガーのスイッチに採用されている場合が多く、検出スイッチや光センサーと違い、明確に「押した」という感触がある他、トリガーストロークの調整においても感触があったりクリック音が鳴るので便利です。

マイクロスイッチの例
タクタイルスイッチの例

スイッチの種類によってクリックの深さは異なりますが、タクタイルスイッチのようにスイッチの稼働量が少ない物が使われている場合、コンマ数ミリ程度動かす事で検知されるので、極めて短いストロークに調節する事も可能になります。

尚、自分は経験した事が無いですが、粗悪なマイクロスイッチ(ハズレ個体とか?)だと数百回程度の動作で壊れてしまったり、チャタリングを起こして意図しない射撃を行ってしまう事もあるようです。

検出スイッチ

検出スイッチは小さなレバーみたいなのが生えているスイッチで、カットオフ、セレクタープレート、トリガーなど様々な場所で使われるケースがあるスイッチです。

物理的な突起を押しますが非常に柔らかい力で動くので感触は全く無いと言って良いです。

スイッチがどの程度押されたら検知されるのかは製品や形状によって様々なので、慣れるまでは微調整に苦労する場合があります。

両方に動かす事が出来る検出スイッチの例
動く方向が決められている検出スイッチの例

また、マイクロスイッチやタクタイルスイッチよりも寿命は長い製品が多いものの、スイッチ側面など想定外の方向からの負荷には非常に弱い為、組み込み時に無茶な負荷を掛けると直ぐに壊れてしまう他、検出スイッチ内にグリスが入り込んでしまう事による検知不良なども起きるので、組み込み難易度が高いです。

特にカットオフの検知に検出スイッチが採用されている場合、グリスの粘度や塗布量を気をつけないと取り返しのつかない事になってしまいます。

光センサー

最近増えてきたのが光センサーで、今ではカットオフもセレクタープレートもトリガーも全部光センサーが採用されている物があります。
物理的な接点ではなく光の反射率を用いる為、物理的な破損が起こらないのが利点です。

光が遮断された事を検知する、光センサーの例
反射率を検知する光センサーの例

また、光の反射率の設定を変更する事で検知位置の微調整を行なう事が出来たりするので、キャリブレーションに用いられたりするので便利です。

不知火 陽炎二型Eの反射シート
Jefftron Leviathan-V2 Opticalの反射シート

ただし、メリットばかりではなくデメリットもあります。

例えば光センサーにグリスが付着してしまったり反射板が汚れてしまったり接着が剥がれてズレてしまったりすると検知不良を起こします。

また、デメリットとしてかなり大きいのは光を用いる都合上、太陽光の影響を受ける事です。
最近は構造やソフトウェアの改善、ユーザー側の認知度も上がってきてだいぶ減ってきたと思いますが、光センサーが出た当初はレシーバーの隙間やマグウェルから入ってきた光が原因で起きる暴発報告が多々有りましたし、自分も動作検証中の暴発を経験しています。

また、メカボックスがアルマイトなどによってメカボックス自体が光を反射させやすかったり、組み合わせるパーツの光の反射率によっては誤作動を起こす場合もあるので、そういう点に気をつける必要があります。
製品によってはセンサーの近くをマットブラックで塗装したりする事を推奨している場合もあります。

磁気センサー

光センサーと似た検知方法で、こちらは磁気を使って入力を検知します。
カットオフやセレクター検知に使われる事が多いです。

ARES EFCSで使われ始め、今は東京マルイ 次世代 MP5でも採用されている検知方法です。
数は少ないですが、サードパーティ製FCUでも磁気センサーを用いた製品があります。

光センサーと同様に物理的な破損が起きにくいので組み込み難易度は低めで、しかもグリスの影響も起きにくい、便利なセンサーです。

セレクターレバーに使われる磁気センサーの例(1個のみ)
セレクターレバーに使われる磁気センサーの例(3つ仕様)

ただし、磁石を部品に埋め込み必要がある為、使用可能なパーツに極端な制限が設けられます。
例えばセクターギアに磁石を埋め込んだ結果、ギア全体が磁気を帯びてしまうと検知エラーが起きます。

また、自分で弄る場合は磁石の向き(N極・S極)を合わせる必要があるのも、注意をしないといけない要素の1つです。


こういったスイッチやセンサーの種類に関してもそれぞれの特徴があるので、FCUを選ぶ際はよく考えて選んだ方が良いでしょう。

E&C 329E COLT M653で使用する電子トリガーについて

今回、E&C 329E COLT M653には不知火商店製の電子トリガー、陽炎一型改を組み込みます。
新しく買った物ではなく2018年頃から持っており、元々はVFC KAC SR635に組もうと思っていたのですが結局組まずに終わってしまったので、今更ながら使います。

アクティブブレーキが付いていない電子トリガーで、不知火 陽炎シリーズの廉価版的な位置づけにある製品になります。
ただし、アクティブブレーキ以外は基本的に上位モデルの陽炎二型と遜色ない設定が可能なので、十分高性能な電子トリガーとなっています。

機能の割に安いですが、残念ながらもう廃盤
圧着端子やヒューズなど一式付属。
説明書も充実しています。

こちらの基盤はカットオフ検知が検出スイッチ、トリガーとセレクタープレートの検知は光センサーで行なう仕様になっています。

2枚構成になっている物が多いVer2メカボックス用の基盤ですが、こちらは1枚のみになります。
これにより、セレクタープレートと連動した物理セーフティを有効にする事が出来ます。(逆にセンサーにSAFEを検知する物が無いので、物理セーフティが必須になる)

セーフティを物理セーフティに頼る仕様のFCUは個人的にあまり好きでは無いのですが、余ってるので使う事にします。

こういう仕様の製品でトリガーストロークを調整する場合はあまりトリガーストロークを詰め過ぎないように気をつける必要があります。
トリガーストロークを限界まで詰めたいなら、FCU側にセーフティの機能がある物を選んだ方が良いでしょう。

FCU組み込みの下準備

FCUをメカボックスに組み込むにはまずは取付部にバリが無いかを確認する必要があります。
Ver2メカボックスで確認すべき箇所は物理トリガーを固定する為のネジ周囲、エジェクターピンの痕などです。

また、そもそもメカボックスとの相性が悪く物理的にFCUが組めない場合は干渉部を削ったりする必要があります。

また、配線を通した時にメカボックス側に付いている突起が邪魔になる場合も多いので、これらは削った方が良い場合が多いです。
特に伝導効率を高める為に太めの配線が使われていたりする場合も多いので、メカボックスを閉じた時にこれらの突起が配線を圧迫したり皮膜を破ってしまうというトラブルも少なくはないです。

突起を削る前
突起を削った後(赤矢印部を切除)

FCUの組み込みと配線を這わせる作業

基盤が問題無く取り付けられたら、配線を通していきます。
Ver2メカボックスの場合、配線の通し方は前方配線と後方配線で少し異なりますが、今回は後方配線の説明をしていきます。

まずは信号線(一番細い線)を一番下にし、次にバッテリー側に伸びる配線、その次がモーター側に伸びる配線という順番で這わせていきます。

尚、配線を這わせる時にしっかり折り目を付けて勝手に暴れないようにするのが良いと思います。(折り目付けすぎて断線させてしまうと元も子もないのでやりすぎNGですが)

また、Ver2メカボックスの場合配線とトリガーピン(メカボックスとレシーバーを固定する為にトリガーの上辺りに差し込むピン)の穴位置と配線の位置が非常に近いので、配線がピン穴に干渉しないように気をつける必要があります。

後ろ側では信号線を+側の配線につなぐ処理をする必要があるのですが、今回はメカボックス内にそこまで余裕が無さそうだったので、メカボックスの外側ではんだ付けをする事にするので、そのまま+側の配線を重ねます。
場合によってはメカボックス側を削るなどして加工を加えても良いと思います。

メカボックスの寸法が細い配線に合わせている場合はメカボックス内で信号線をつなげるのが難しかったりする事があります。

配線に折れ目が付いてレイアウトが決まったら配線が暴れないように熱収縮チューブを被せます。

トリガーの組み込みと調整

続いて、トリガーを組み込みストローク量の調整を行います。
光センサーによる検知方式の場合、センサーの上を通過するタイミングで検知されるので、トリガーの位置をよく確認しながら調整を行なう必要があります。

トリガーの初期位置が決まったらプラ板を貼り付けます。

次にセレクタープレートとトリガーに陽炎一型に付属している反射板(白い板)を張ります。

冒頭で説明した通り、陽炎一型はセーフティを物理で行なう必要があるので、セーフティレバーを取り付けます。
そのままだとトリガーストロークを詰めたトリガーに干渉してしまい、セーフティが効かなくなってしまうので長さを調節する必要があります。

この状態になったら一旦メカボックスを閉じて、センサーテストを行います。
不知火 陽炎シリーズにはセンサーテストモードという機能が付いており、モーターを取り付けていない状態でバッテリーを接続すると、LEDの点滅によってトリガーやセレクター、カットオフの検知が行えているかどうか(スイッチやセンサーが機能しているか)を確認する事が出来ます。

配線処理やコネクタの取り付け

センサーテストが問題無ければギアやピストンなど、他のパーツを組み立てていきます。

メカボックスを閉じてメカボックス外側に付いているパーツも取り付け、ロアレシーバーへの組み込みまで行います。

グリップを取り付けたら配線を適切な長さに調節します。
グリップ内部に這わす配線の方向はグリップの形状によって様々で、今回のようにグリップの後ろ側に通すパターンもあれば+と-を前後から伸ばすパターンや、+と-両方を前に通すパターンなどがあります。

このようにモーターを挿し込んだ状態で配線を曲げ、モーターピンの辺りに印を付けて配線をカットします。

その後、被膜を破ってモーターピンを取り付けます。

配線のカットや被膜を破く作業、圧着端子(モーターピン)の取り付けなどはこのような電工ペンチがあると便利です。

基本的に電工ペンチにはこのように対応する配線の太さや圧着端子ごとに切れ込みが付いているので、綺麗に配線処理を行なう事が出来ます。

この手順で配線を整えたら綺麗に収まります。
FCUの種類によっては予め配線にモーターピンが付いている物もありますが、その場合適切な長さになっておらず、配線の取り回しが大変だったりする場合があります。

続いて、ストック側の配線処理です。
+側の配線の皮膜の途中を破き、信号線をはんだ付けし、熱収縮チューブを取り付けます。
この時に皮膜を破る作業は処理をカッターナイフを使うと便利です。

最後にストックを取り付け、配線の長さ自体を整え、ヒューズとバッテリーコネクタを取り付けます。
今回、そんなに高い負荷を掛けるセッティングでは無いのでヒューズの容量は20A、バッテリーコネクタはXT30にしました。

ちなみに、コネクタをはんだ付けしたりする際はこういうアームがあると便利です。

ここまでやったらバッテリーを繋いで動作テストを行います。

セーフ・セミ・フルの動作はもちろん、各種設定も問題無く行える事を確認します。

設定後の動作はこんな感じになりました。

まとめ

という訳で、電子トリガーの組み込みや配線の調整で気をつけているポイントについて紹介しました。

電子トリガーは別に組み込む必要は無いですし、そもそもカスタムの途中で組み込む物でも無いのですが、ずっと使わずに放置されていた陽炎一型改を早く消費したかったので、今回はこのタイミングで組み込む事にしました。

E&C 329E COLT M653内部カスタム記事へのリンク